詩織さんもそう感じた1人だ。ある時、捜査員は詩織さんにこう告げた。

 「もっと泣くとか怒るとか、被害者ならば被害者らしくしてくれないと伝わらない」

 詩織さんが続ける。

 「捜査をしていくなかで強く感じたのは、密室で顔見知りから受けた性暴力は立証が難しいということ。被疑者が『相手は喜んでついてきた、合意があった』と言えば、それを否定するのは簡単なことではありません。捜査の末、『一緒に部屋に入っただけで合意だ』と見なされて起訴されないケースだってあるのです。

 私の場合は、ホテル入口の監視カメラに山口氏に引きずられるようにして部屋に入っていく映像が残っていました。にもかかわらず、『その後部屋の中である程度時間が経っている。その間に何が起きたのかは第三者にはわからない』と何度も言われました。意識のない状態で部屋に引きずりこまれた人間が、その後どう『合意』するというのでしょうか…」

 捜査に協力する過程で警察から何度も「立証は難しい」と言われ、精神的に追い込まれていった詩織さん。

 「捜査に協力した数か月は精神的にも身体的にも仕事を続けられる状況ではありませんでした。自分の行動を疑われ、再現させられ、まるで私が加害者として取り調べをされていると錯覚することさえあった。早く終わりにしたいと何度も感じました」(詩織さん)
※写真はイメージ(ゲッティ・イメージズ)
※写真はイメージ(ゲッティ・イメージズ)
 問題は警察だけではない。5月の会見以降、“世間の無理解”が詩織さんに襲いかかった。

 「『死ねばいいのに』という誹謗中傷だけでなく、丁寧な言葉で『女性としてあなたの行動は恥ずかしい』『私は飲みに行く時間も場所も選ぶ。あなたは自業自得だ』『あなたは被害者に見えない、山口氏を陥れようとしているのではないか』というメールをいただきました。正直、驚きましたし、ショックでした」(詩織さん)

 こうした声は少数ではない。6月にNHK『あさイチ』が性暴力を特集した際は、「最後まで抵抗することをやめなければよかった」との70代男性の意見が寄せられた。しかし強姦事件で抵抗すれば、殺害される恐れもある。

 アパートの一室から9人の遺体が見つかるという猟奇性で、現在、日本中を戦慄させている神奈川県座間市の死体遺棄事件も、10代を含む女性被害者8人は全員、強姦されていたとされている。それでも、ネット上には「SNSで知り合った男性についていく方が悪い」という声が散見されており、被害者に対する世間の風当たりは強い。

関連記事