非親告罪は、被害者の訴えがなくても裁判を開けますが、実際は被害者の協力なしに公判を維持することは難しくなります。被害者は裁判に協力すべきでしょうか。ただそれでも、被害を届けなかったり起訴されなかったりすることで、事態が悪化することもあります。

 性犯罪の被害者はとても深く傷つくのに、加害者側は性犯罪をとても軽く考えがちです。逮捕されない、事件化されないとなれば、なおさらでしょう。加害者は犯行を繰り返します。

 2014年の日本映画『ら』は、映画監督の水井真希氏が自らの被害体験をもとにして作られた映画です。映画では、ある性犯罪被害者が被害を警察に届けないままにします。その結果、第2、第3の被害者が出るというストーリーです。

 このような事例は数多く起きています。また、逮捕されても、示談などが成立し起訴されないことで、さまざまな問題が起きることもあります。

 以前、ある大学の学生たちによる集団準強姦事件が発生しました。学生らは逮捕されて実名報道もされ、大学から無期停学処分を受けました。しかし、被害者との示談が成立し、不起訴となります。すると学生側は、大学の処分が不当だとする民事裁判を起こしました。

 民事裁判では推定無罪ではないので、訴えられた大学側が処分の正当性を立証しなくてはなりません。しかし、示談が成立した被害者からの協力は得られません。大学側は苦しい戦いになります。
※写真はイメージ(ゲッティ・イメージズ)
※写真はイメージ(ゲッティ・イメージズ)
 1審では、大学の処分が無効とされます。2審でも、集団準強姦があったとはされないものの、学生らの行動は問題があったとして、大学の処分は有効とされました。真実はどうだったかは闇の中です。性犯罪は、被害者が泣き寝入りをすることが多い一方で、冤罪(えんざい)もまた多くなりやすい犯罪です。

 犯罪被害を受けた人は、きちんと警察に届けるべきでしょう。必要なら裁判もすべきでしょう。しかし、私たちは被害者にそれを強いることはできません。犯罪予防のために被害者に協力を乞うのであれば、被害者を保護しなければなりません。