2019年02月20日 12:55 公開

4年前にイギリスからシリアへ渡航し、イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」に参加した19歳の女性が、イギリスの市民権を失う見通しとなった。

シャミマ・ベガムさんは2015年、15歳でISに参加するためにロンドンからシリアに渡航。今年2月にシリアの難民キャンプで発見され、イギリスに帰りたいと訴えていた。

英政府筋によると、ベガムさんは他国の市民権を獲得できるため、英市民権のはく奪は可能だという。

一方、ベガムさんの家族の代理人、タスニム・アクンジー弁護士はツイッターで、家族は政府の決定に「がっかりしている」と述べ、「あらゆる法的手段」でこれを阻止する構えだと話した。

報道によると、ベガムさんはシリア最後のIS拠点バグーズを離れ、先週末に息子を出産した。

18日にBBCの取材に応じたベガムさんは、ISの「広告塔」になるつもりは決してなかったと話し、今はただイギリスで静かに息子を育てたいと語った。

英ITVニュースは、ベガムさんの母親に送られた内務省の書簡を入手。娘の市民権はく奪を伝える書簡では、このことを母親からベガムさんに伝えるよう要請している。

バングラデシュとのつながり

英政府は1981年イギリス国籍法にもとづき、内相が「公共の利益にかなう」と判断し、かつ当事者が無国籍にならない場合において、個人の市民権をはく奪することができる。

ベガムさんは姉妹名義のイギリスのパスポートを使ってシリアに渡航したが、国境を越えた際に没収されてしまったと話している。

ベガムさんの母親はバングラデシュ出身とされており、同国の法律ではこの場合、ベガムさん自身もバングラデシュ国籍が与えられている。

しかしBBCの取材で母親は、バングラデシュのパスポートを持っておらず、同国には行ったこともないと話した。

一方、ベガムさんが市民権をはく奪されるまでに生まれた息子は、今後もイギリス市民権を保有する。理論上はイギリス政府はこの息子の市民権もはく奪できるが、母子が社会にどれほどの脅威になるのかと比較して検討する必要がある。

内務省報道官は、「内相は最近、イギリスとイギリスに住む人々の安全保障が最優先事項だと言明してきた」と説明した。

また個別案件についてはコメントしないとした上で、市民権はく奪は「入手できる全ての証拠に基づいた判断であり、軽々しく決定したものではない」と述べた。

イギリスのサジド・ジャヴィド内相は先に、イギリスを離れたテロ組織に参加した二重国籍者100人以上が、すでにイギリスの市民権をはく奪されていると説明している。

ベガムさんには内務省の判断に不服を申し立てる権利がある。

ベガムさんは2015年2月、学校の友人だったカディザ・ソルタナさんとアミラ・アベイスと共にイギリスを離れた。ソルタナさんは爆撃で死亡したと報じられている一方、アベイスさんの安否は分かっていない。

ベガムさんはこれまでに2人の子どもを亡くし、先週末に息子を出産したばかり。

オランダ国籍で後にイスラム教徒に改宗したというベガムさんの夫は、ISの戦闘員だったが、2週間前に対立するシリアの戦闘員に投降したとみられている。

ISはこれまでシリアで支配していた地域のほとんどを失い、現在ではイラク国境の50キロ平方メートルほどの地域に1000~1500人の戦闘員が残っている。

「リハビリがしたい」

ベガムさんはBBCの取材で、シリアに渡航したことは後悔していないと語った。また、IS戦闘員が捕虜の首を切り落とし殺害する動画や、ISの下での「良い生活」を映した動画を見て、参加しようと思ったと話した。

一方で、ISが行ってきたこと全てに賛同しているわけではないと話している。

「支持できるイギリスの価値観もあるし、イギリスに帰って定住し直して、リハビリとかするつもりはある」

2017年5月にマンチェスター・アリーナで起きた爆破テロ事件については、ベガムさんはショックを受けたと語った。この事件では22人が亡くなり、ISが犯行声明を出している。

「間違いだと思う。何の罪もない人が殺されるなんて」と、ベガムさんは話した。

一方でベガムさんは、マンチェスターの事件をシリアのIS掃討作戦と並べ、「兵士を殺すのは別。それは正当防衛だから悪くない。けれども、バグーズで今も(政府の)爆撃で不当に殺されている女や子どものように、女や子どもを殺すのは(また別のこと)。これはお互い様のことで、ISでは今まさに女や子どもが殺されている」と、IS掃討作戦を批判した。

「これはある種の仕返し。仕返しなので正当なのだと言われたので、私も、なるほどそれは正しい言い分だと思った」

こうしたベガムさんの発言に、マンチェスターで重傷を負ったロビー・ポーターさんは怒りと吐き気を覚えると反発している。

「子供や家族を失った人たちは、こんな人間の帰還を一瞬でも検討するなんてことを、どう思うのか。彼女は、被害者や、子どもを亡くした人たちに会いに来ればいい。もしそうしたいなら。同席して、何が正当化されるのか見てみるつもりはあるのか」

(英語記事 IS teenager to lose UK citizenship