これを踏まえれば、「仕切り直し」という自民党の要求は過大であるが、今回の「埋め立て」をめぐる県民投票が矛盾だらけである点もはっきり指摘しておかなければならない。

 そもそも「埋め立て」は基地機能移設の技術的一手段だ。「埋め立て」反対に一票を投じた人の中には、キャンプ・シュワブの陸上部分への移設なら「是」とする県民、県内の別の場所への移設なら「是」とする県民も、また移設をやめ普天間基地をこのまま維持する(固定化する)なら「是」とする県民まで含まれてしまう。

 つまり、埋め立ての是非を問う県民投票では、本来の問題である普天間基地の辺野古移設に対する是非は問われないのである。

 これでは、民意を汲み取るには不十分だ。法的拘束力のない投票だから、結果自体が埋め立てを左右するわけではないが、もし政府が「では辺野古埋め立ては止め、普天間基地は当面このままにしておきましょう」と判断することにでもなれば、この県民投票にはほとんど何の意義も見いだせなくなってしまう。

 これに加えて「民意の範囲」をどう見るかという別の問題もある。地元の名護市辺野古の住民は「移設受け入れ」が多数派である。辺野古を含む名護市で昨年行われた市長選挙では、「移設容認」の姿勢をとる市長が選ばれ、「移設反対」を主張する候補は落選している。

 要するに、辺野古や辺野古のある名護市の「民意」と県民投票で示される「民意」がねじれる可能性が高いということだ。地元住民が受け入れる移設を、県内他地域の住民が受け入れないという結果を、われわれはどう捉えればいいのか。

 今回の県民投票を客観的に観察すれば、「県民の基地負担の増加」と「埋め立てによる自然環境の破壊」を前面に出して移設に反対するという「基地反対派」の「戦術」の延長線上に位置づけられるものだ。

 これは極めてシンプルかつ巧妙な構造を持つ戦術で、沖縄県、名護市、辺野古の「容認」の下に進められてきた移設の経緯、基地や埋め立てをめぐる利権や補助金に依存してきた沖縄経済の実態、基地負担の実情に対する理解、日米同盟の望ましいあり方の考察といった複雑な問題を回避しながら人々の素朴な「感情」に訴える効果がある。
米軍普天間飛行場移設のための埋立てが進む名護市辺野古の沿岸部=2019年2月(ドローン使用)
米軍普天間飛行場移設のための埋め立てが進む名護市辺野古の沿岸部=2019年2月(ドローン使用)
 県民・国民の中には、辺野古移設に絡むこうした複雑な事情を知らないまま、「純粋」な気持ちから埋め立てを批判する人が多いが、これこそこのシンプルかつ巧妙な戦術の「効果」と呼ぶべきものだ。

 「埋め立て」は、辺野古移設や基地問題に絡む本質的な問題を棚上げしながら「反対」を唱えることのできるテーマと化しているのが実情である。今回の県民投票は、「民意の集約」というより「民意の誘導」を目的とするものだと断定してよいだろう。