重村智計(東京通信大教授)

 2019年3月1日、韓国は日本統治からの独立を目指した「3・1独立運動」から100年目を迎える。その直前の2月27、28日には、2回目の米朝首脳会談がベトナムのハノイで開かれる。

 その場で、両首脳ともに会談成功を世界にアピールすることは間違いない。韓国では、米朝首脳会談と南北首脳会談への期待から、「3・1独立運動」記念の反日式典は盛り上がらないだろう。

 そのような中で、今後の朝鮮半島情勢はどうなるのか、島根の報道関係者が私のもとに取材に来た。最近の日韓関係の悪化や自衛隊機へのレーダー照射問題、米朝首脳会談の行方、拉致問題など、一連の朝鮮半島問題について聞かれた。特に気になったのは、やや奥歯に物が挟まったような口調で「『竹島の日』記念式典はどうしたらいいですかね?」と最後に尋ねられたことだった。

 その言葉には、公(おおやけ)には言いにくい思いが伝わってきた。私も新聞記者だったので、気を使いながら率直に質問の理由を聞いた。

 実は、島根県内で「竹島の日式典をもうやめたらどうか?」との空気があるという。県外ではうかがい知れない「竹島の日疲れ」のようだ。でも、私は竹島の領有権を主張する根拠を失うから、「式典を続けるしかない」と伝えた。「竹島の日」記念式典は島根県の歴史的使命と思わなければならない。

 竹島問題は複雑だ。日本国民や島根県民全てが「竹島評論家」であり、一家言ある。一方で韓国政府の反発も強い。ひとたび発言すると、誹謗(ひぼう)中傷の嵐に巻き込まれ、韓国側の抗議も毎回受けることになる。式典実施が「ほとほと嫌になった」という島根の感情は理解できる。

 この現象は、私が朝鮮問題に取り組み始めた1970年代初めから続く「韓国病」「朝鮮病」に連なるものだ。1975年に韓国に留学した私は「韓国経済は発展する」「北朝鮮は経済危機」と書いたら、「韓国の手先」という非難や誹謗中傷の嵐が、88年のソウル五輪のころまで続いた。一方、94年には「北朝鮮は石油がないから戦争できない」と書くと、「北朝鮮の手先」と批判された。「工作国家」である韓国と北朝鮮、一方の立場を代弁しながら「敵」を非難し合う、まるでエージェントのような人間が日本国内にも大勢いたからである。
2018年6月12日、会談で握手する北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(左)とトランプ米大統領(AP=共同)
2018年6月12日、会談で握手する北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(左)とトランプ米大統領(AP=共同)
 だが、誤った「世論」との戦いは新聞記者の「生きがい」だった。報道の自由を守る新聞社と先輩記者、友人に支えられながら主張を続けた。

 周知のように、竹島の帰属は日韓基本条約では「棚上げ」された。もし、当時の朴正煕(パク・チョンヒ)大統領が「日本の領土」と認めていたら、朴政権は崩壊しただろう。