1967年のビートルズのアルバム『サージェント・ペッパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』以前に、1965年に発売された『ラバーソウル』が早くも投げかけていた音楽的な意義。1964年のビートルズのアメリカ上陸で一気に「覚醒」したアメリカ。その後ジミ・ヘンドリクスの登場で、今度は逆襲へと転じたアメリカ。ボブ・ディランの不気味な存在感。音楽的に分離された状況にあったイギリスとアメリカが一体化し、国境のない統合の時代を迎える。

 そうした代の流れを追う中で、多くの人の記憶に残っているミュージシャンやイベント、社会の流れを英米双方の視点から同時代的に整理し、各章でスピード感をもって詳述してゆく。まさに起伏の激しいロックミュージックを聞いているような感じがする。

 驚くのは、登場するミュージシャンの多くがいまも現役であることだ。もちろん早世した天才スターも多いが、1960年代から生き続ける多くのミュージシャンが近年日本を訪れて元気な姿を見せてくれているのは感動すら覚える。

 終章で筆者はロックは果たして歴史になったのかどうか総括を試みる。厳然たる時間の流れはありながら、過去と現在を行き来する側面をもつことをボブ・ディランの歩みをひきながら考察する。

 〈ロックと称される世界の時間軸では60年代はまだ終わっていない〉

 〈ロックの国では、どうやら人間は年をとらないようになっているのかもしれない〉、

 著者はこうした表現でしめくくる。音楽の専門家でない筆者が見解を述べるのはおこがまししいと思いつつ、著者の思いには大いに共感できる。
※画像はイメージです(ゲッティイメージズ)
※画像はイメージです(ゲッティイメージズ)
 7年前、ミック・ジャガーにインタビューした時、「80歳になってもサティスファクションを歌っていますか?」と聞いてみた。ミックは「それはわからないなあ」と笑いつつ、「歌うことは好きだからやめるつもりはない、いつやめるかなんて決めていない」と答えてくれた。

 その時「ロックに終わりはないんだよ」とミックに言われた気がしたが、本書を読んで何か共鳴するものを感じた。自分が30年以上ロックに向き合い、様々な曲を聴きながら考えてきたことは間違っていなかったのかもしれないと、本書から力をもらった気がした。