サンプラザ中野くん(ロック歌手)

 フレディ・マーキュリーが大好きである。サンプラザ中野くんだー!

 フレディになら抱かれてもいいと考えていた。結構マジに。そんなフレディ信者の私は公開早々、映画『ボヘミアン・ラプソディ』を見た。最後のライブシーンでは両手で口を押さえてはみたものの、大号泣は止められなかった。

 成人してから、喉が枯れるほど泣いたのは、父親が死んだ時と、忌野清志郎さんが亡くなった時、そして20年飼った愛猫の亡き骸(がら)を土に埋めた時だけだ。三十余年前にリードボーカリストとしてロックバンド「爆風スランプ」でデビューした。肩書は「ロック歌手」である。そんな私が『ボヘミアン・ラプソディ』の大ヒットを分析してみたい。

 これまで4回見た。「Dolby(ドルビーアトモス=最新のサラウンド技術)」「極音(極上音響上映)」「IMAX」、そして「応援上映」を鑑賞した。

 1回目はただありがたかった。「フレディありがとう! ロックミュージックありがとうございます〜!」と泣きながら感謝した。2回目は「ロックバンドあるある」シーンに胸躍った。

 アイデアが尽きるまで試みるレコーディングのシーン、名曲を生み落とす時の胸の震え、メンバー間の名声や収入差からの不穏な関係性などなど、こそばゆくなるほどリアルに表現されていた。クイーンのメンバーが制作陣に名を連ねているからこそだと思った。

 3回目はその完璧さに打たれた。全てのシーンで無駄がない、と。制作にかかわった人々の熱意と愛情と能力に感謝した。そして4回目。見ている間中、ただただ幸せだと気づいた。こんなに至福の134分間を2千円足らずで味わえる幸せに、心の中で手を合わせたよ。

 おっと、これでは壮大な『ボヘミアン・ラプソディ』賛歌になってしまう。多少は批評家としての目線が必要だ、と思い起こしたら一つあった。「強いて言うなら、猫の出番がちょっと多い」と4回目を見終えた時、同行者に言っていた。そうなのだ。フレディは大の猫好きだったのである。このポイントから異例の大ヒットを分析してみたい。
映画『ボヘミアン・ラプソディ』の一場面=(C) 2018 Twentieth Century Fox
映画『ボヘミアン・ラプソディ』の一場面=(C) 2018 Twentieth Century Fox
 フレディの出身地は、イギリスの保護領だったタンザニアのザンジバル島。家の宗教はゾロアスター教(拝火教)である。祖先はイスラム教に追い出されてペルシャ、今のイラン辺りからザンジバルに渡った、と映画の中でフレディの父親がこぼしている。

 ゾロアスター教は、イスラム教の勃興(ぼっこう)に押され東へ、そしてインドを経て中国へ、そこから日本にも渡ってきている。6世紀ごろの話とされる。火や太陽を崇拝する宗教は仏教の中に隠れて渡来したらしい。