木宮正史(東京大学教授)

 2月27日、28日に行われる第二次米朝首脳会談を考察する上で、その比較対象はやはり昨年6月12日にシンガポールで開催された第一次米朝首脳会談だ(本稿の執筆は2月26日)。第一次米朝首脳会談および共同声明で提示された基本コンセプトが第二次首脳会談でも提示されることになる。①新たな米朝関係②朝鮮半島平和体制③北朝鮮の安全保障④朝鮮半島の非核化である。

 しかし、今回の第二次首脳会談では、これに加えて⑤制裁の緩和⑥(長距離)弾道ミサイル問題が新たに付け加えられる可能性がある。ただ、第二次首脳会談までの限られた時間の中で、北朝鮮の非核化の具体的な道筋とそれに対して、北朝鮮が満足するだけの米国の見返りについて、双方の妥協がどの程度実現するのか、依然として不透明であることには違いない。

 まず米国であるが、第一次首脳会談の直後は③北朝鮮の安全保障の提供として朝鮮戦争の終戦宣言や米韓合同軍事演習の中止などに言及していたが、演習中止は実現するが、終戦宣言に関しては米国内からの慎重論もあり、実現に至っていない。

 そこで、北朝鮮は代わりに制裁緩和を要求するが、これについては非核化が実現されなければ制裁の緩和はないという姿勢で臨む。ただし、トランプ大統領もそうだし、特に米国務省のビーガン北朝鮮担当特別代表は、寧辺(ニョンビョン)核施設の廃棄などに対する見返りとして、人道支援の拡大、終戦宣言、米朝相互の連絡事務所の開所を示唆している。

 寧辺以外の核施設の申告、その廃棄などをめぐる行程表の提示などが、どの程度達成されるのかが未来の核、核の凍結だけではなく、過去から現在に至る核の廃棄をも含められるのかどうかの試金石になるだろう。

 興味深いのは、首脳会談の直前25日になって、韓国発で興味深い発言が二つ出てきたことである。

 一つは、大統領府の首席補佐官会議で、米朝首脳会談への期待を表明する中で文在寅(ムン・ジェイン)大統領自身が「歴史の周辺ではない中心に立ち、戦争と対立から平和・共存に、陣営とイデオロギーから経済と繁栄に向かう新韓半島体制」を主導的に準備しなければならないという立場を表明したことである。
2019年1月、ソウルの韓国大統領府での年頭記者会見で、報道陣の質問に応じる文在寅大統領(共同)
2019年1月、ソウルの韓国大統領府での年頭記者会見で、報道陣の質問に応じる文在寅大統領(共同)
 もう一つは、大統領府のスポークスマンによる「米朝2国間の終戦宣言」に対する肯定的発言である。北朝鮮の非核化の具体的な措置に関する米国の提示する見返りが何であるのかについて注目されていたが、「米朝2国間の終戦宣言」が急に注目されてきた。本来であれば、韓国もこれに加わるべきであったのだが、韓国は既に2018年9月の平壌宣言で実質的な終戦宣言、不戦宣言、不可侵宣言を行っているということで、北朝鮮の非核化が進むという条件付きではあるが、韓国は歓迎の意思をあらかじめ示している。