中岡望(東洋英和女学院大客員教授、ジャーナリスト)

 第2回米朝首脳会談が2月27日からベトナムのハノイで開催される。開催に先立って事務レベルでの協議が会談直前まで続けられているが、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が本当に「完全な非核化」に応じるのかどうか、これに対してトランプ大統領がどのような条件を提示するのかが焦点となっている。

 注目度が高いだけに、さまざまな憶測が飛び交っている。たとえば、北朝鮮の非核化に対応して、トランプ大統領は朝鮮戦争の終結宣言を行い、制裁解除とあらゆる経済支援を約束するのではないかとの報道もある。だが、現時点では極めて困難な交渉になることは間違いないだろう。

 そもそも、なぜトランプ大統領は、この段階で2回目の首脳会談を開催すると決定したのだろうか。事務レベルでどのような交渉が行われているか知る由はないが、ある程度の成算がなければ首脳会談を行うことはないはずだ。

 ホワイトハウスは2月21日、トランプ大統領の対北朝鮮交渉に対する基本的な考え方をウエブサイトに掲載している。そこには、交渉の目的について「今回の首脳会談はシンガポールで行われた会談で両首脳が交わした約束をさらに前進させることを目標としている。すなわち継続的かつ安定した平和の達成と朝鮮半島の完全な非核化の実現」とした上で、「大統領は、もし北朝鮮が完全な非核化を実現するなら、われわれは(北朝鮮にとって)経済発展の選択肢を提供するように努める」と書かれている。

 2018年6月に開催されたシンガポールでの第1回首脳会談で非核化に関する共同宣言が出されたが、非核化に向けたロードマップでは合意は見られず、具体策については会談後の事務レベルでの交渉に委ねられた。

 多くの論者は、この会談は失敗だったとみている。実際、この1年、両国政府の間でどのような具体的な話し合いが行われたかほとんど明らかになっておらず、実質的な前進があったとは思われない。にもかかわらず、トランプ大統領は2回目の首脳会談を開く決断をしたのはなぜだろうか。

 その根拠として、ホワイトハウスは「北朝鮮は400日以上、核兵器実験あるいはミサイル発射実験を行っておらず、プルトニウムとウラニウム濃縮施設の廃棄を約束している」と、北朝鮮が非核化に向け努力を行っていると説明している。
2018年6月、シンガポールでの首脳会談の会場で、連れだって歩くトランプ米大統領(左)と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(ロイター=共同)
2018年6月、シンガポールでの首脳会談の会場で、連れだって歩くトランプ米大統領(左)と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(ロイター=共同)
 さらに「合衆国とその同盟国は、どのようにして北朝鮮への投資を促進し、インフラを改善し、食糧安定などを高めることができるか検討を行う準備がある」と、非核化の見返りに、制裁解除は言うまでもなく、さまざまな経済支援を行う可能性を示唆している。トランプ大統領は、異常なほど北朝鮮の「誠意」を強調している。

 そうしたトランプ大統領の驚くほど楽観的で前のめりの姿勢の背景には、大統領の焦りがあるとの指摘もある。政権が発足して2年が経過するが、トランプ政権は目立った実績を上げていないからだ。