川上和久(国際医療福祉大学教授)

 毎年、10月になると「ノーベル賞の季節」がやってくる。ノーベル賞は、言うまでもなく、ダイナマイトの発明者として知られるアルフレド・ノーベルの遺言に従って1901年から始まった世界的に権威ある賞だ。

 テレビの視聴率が安定して取れる話題なのだろうか。「今年は日本人のノーベル賞受賞があるのか?」という話題は、今や「年中行事」化していると言っていいだろう。

 特に、近年は日本人のノーベル賞受賞が続いている。2014年からの5年間だけでも、14年の赤崎勇、天野浩(物理学賞)、15年は梶田隆章(物理学賞)、大村智(医学・生理学賞)、16年は大隅良典(医学・生理学賞)、そして18年の本庶佑(医学・生理学賞)と6人の受賞者を出している。

 日本人は物理学と化学、医学・生理学の三つの自然科学分野で多数の受賞者を輩出してきたが、ノーベル賞には他に三つの分野がある。1968年に川端康成、94年に大江健三郎が受賞した文学賞と、74年に佐藤栄作が受賞した平和賞、それに経済学賞だ。

 自然科学や文学と比較して、平和賞はいかにも異質に映る。実は、平和賞はノーベルがスウェーデンとノルウェー両国の平和友好を祈念して、ノルウェーで授与を行うことにしたため、授与主体がノルウェー政府になっており、その点でも他の分野と異なる。
オスロでのノーベル平和賞授賞式で演説するナディア・ムラド氏。「イスラム国」(IS)の性暴力を告発し、2018年の平和賞を受賞した(AP=共同)
オスロでのノーベル平和賞授賞式で演説するナディア・ムラド氏。「イスラム国」(IS)の性暴力を告発し、2018年の平和賞を受賞した(AP=共同)
 ちなみに、いまだ日本人受賞者がいない経済学賞は、正式名称を「アルフレド・ノーベル記念経済学スウェーデン銀行賞」といい、スウェーデンの中央銀行が1969年に始めたものだ。ノーベルの遺言に基づく五つの賞とは明らかに成り立ちが異なる。

 そのノーベルの遺言で、平和賞は「国家間の友好関係、軍備の削減・廃止、及び平和会議の開催・推進のために最大・最善の貢献をした人物・団体」に授与することになっている。