国別で見ると、最も多く受賞しているのは、やはり米国だ。日露戦争の際、ポーツマス講和会議を開催して日露の講和を仲介したセオドア・ルーズベルトが1906年に受賞、国際連盟創設に貢献したウッドロウ・ウィルソンも1919年に受賞している。

 そのほか、米国の大統領としては、2002年にカーター元大統領も受賞している。カーター氏の受賞理由は「数十年間にわたり、国際紛争の平和的解決への努力を続け、民主主義と人権を拡大させたとともに、経済・社会開発にも尽力した」とある。

 だが、1994年に北朝鮮の核開発で米朝関係が緊張した際、特使として北朝鮮入りしたことを忘れてはならない。会談した金日成(キム・イルソン)主席が、国際原子力機関(IAEA)査察官の駐在継続に同意し、米朝協議が続いている間、使用済み燃料の再処理を凍結すると約束した。

 要するに、カーター氏は国連安全保障理事会による北朝鮮への制裁回避に動いたのである。言い換えれば、「北の核開発を結果的に止められなかった元大統領」なのである。

 このとき、きちんと北朝鮮への制裁を実行していれば、北朝鮮の核ミサイル開発は今日のような深刻な事態にはならなかったろう。この一事をもってしても、平和賞の選考には毀誉褒貶(きよほうへん)がつきまとう。

 これまでノーベル平和賞を受賞した米国大統領は4人いる。最後の一人が2009年に受賞したオバマ前大統領だ。「国際的な外交を強化し、市民の間の協力を高めることに、特別な努力を傾けた」というのが受賞理由であり、その年の4月にチェコ共和国の首都、プラハで「核なき世界」に向けた呼び掛け、「プラハ演説」を行ったことも評価された。そんなオバマ氏へのトランプ大統領の対抗心は、並々ならぬものがある。
米国のオバマ前大統領のポスターを掲げる支持者(ゲッティイメージズ)
米国のオバマ前大統領のポスターを掲げる支持者(ゲッティイメージズ)
 「カーターなんて、北朝鮮の核開発を助長した張本人じゃないか、オバマだって、オレ以上の『言うだけ王子』だ。オレは、実際に金正恩(キム・ジョンウン、朝鮮労働党委員長)とサシで会談して、核開発を止めさせているし、ミサイルだって発射させてない。行動を伴っているのだ。ノーベル平和賞くらい、オバマにやるくらいなら、オレだってもらったっていいだろう」。邪推かもしれないが、トランプ氏の思いを勝手に推察してみれば、これぐらいは考えているのかもしれない。

 韓国の金大中(キム・デジュン)元大統領も、2000年の南北首脳会談で北朝鮮に甘い顔を見せただけで、ノーベル平和賞を受賞した。パフォーマンスとロビー活動での受賞と揶揄(やゆ)されたが、「実質を伴わなくてもパフォーマンスで受賞できる」というノーベル平和賞は、パフォーマンス好きのトランプ氏にはふさわしい、と見るべきか。