2019年02月28日 12:18 公開

ドナルド・トランプ米大統領の元顧問弁護士、マイケル・コーエン元弁護士(52)は27日、モスクワでの高層ビル建築について自分がうそをつくことをトランプ氏が望んでいたと、連邦下院の委員会で宣誓証言した。元弁護士は、連邦議会への偽証、トランプ氏の不倫相手とされるポルノ女優への口止め料支払いによる選挙資金法違反、脱税などの罪で禁錮3年の有罪判決を受けており、5月から服役する予定。

下院監視・政府改革委員会の公開公聴会でコーエン元弁護士は、トランプ氏が大統領選中にロシアでのビジネス取引はないと一貫して主張しながら、モスクワでの高層ビル建築計画を自らひそかに指揮していたと証言。さらに、民主党全国委員会のメール漏えいについてトランプ氏は承知していたと述べた上で、大統領を「人種差別主義者」で「詐欺師」で「いかさま」だと呼んだ。

元弁護士は26日、ニューヨーク州最高裁によって弁護士資格を剥奪(はくだつ)されている。

北朝鮮の金正恩氏との2度目の首脳会談のためヴェトナム・ハノイ入りしているトランプ氏は27日、首脳会談の準備時間からツイートする時間を割き、「マイケル・コーエンは(残念ながら)僕の代理人を務めた大勢の弁護士の1人だった。依頼人はほかにもいた。たったいまうそと詐欺を理由に、州最高裁に弁護士資格を剥奪された。トランプと関係なく悪いことをした。自分の刑期を減らすためにうそをついている。悪党(訳注:ヒラリー・クリントン氏の意味)の弁護士を使って!」と書いた。

https://twitter.com/realDonaldTrump/status/1100683974899363840


27日夜に始まった米朝首脳会談は、28日が最終日となる予定。

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議会偽証はトランプ弁護団の指示と

コーエン元弁護士は下院監視委で、トランプ氏が大統領選中にロシアとの取引などないと表向きには主張しながら、モスクワにトランプ・タワーを建てる計画を「承知し指揮」していたと証言した。

「私がロシアで精力的に、(トランプ氏の)ために交渉していた同じ時期に」、「彼は私の目を見て、ロシアでビジネスはしていないと言い、そしてアメリカ国民に同じようにうそをついた。つまりこうして彼は、私にうそをつけと指示していた」

「彼は、私がうそをつくことを望んでいた」と、元弁護士は付け足した。

モスクワの高層ビル建築について、元弁護士はかつて2017年に連邦議会に偽証し、有罪となっている。元弁護士は当時、モスクワでのビル建築計画は2016年1月までに中止されていたと議会で証言したものの、実際には大統領選の渦中の2016年6月まで計画は進んでいたと後に認めた。モスクワのトランプ・タワー建築は結局、実現しなかった。

コーエン元弁護士はこの日、自分がかつて議会に偽証したことを謝罪。偽証内容は、トランプ氏の弁護団が「精査し編集」したものだと述べた。

この公聴会の後、トランプ氏の個人的な法律顧問、ジェイ・セクロウ弁護士は声明で、「トランプ・タワー・モスクワの交渉期間を異なって証言するよう、大統領の弁護団が証言を編集もしくは修正したと、マイケル・コーエンが発言した本日の証言内容は、完全に事実と異なる」と反論した。

民主党メール漏えいについては

コーエン元弁護士は、トランプ氏の長年の盟友、ロジャー・ストーン被告(偽証など罪状7件で起訴)が2016年7月に、すでに共和党の大統領候補指名を獲得していたトランプ氏に電話してきた際、トランプ氏と同席していたと話した。

元弁護士によると、ストーン被告は告発サイト「ウィキリークス」創設者のジュリアン・アサンジ氏と話をしたところで、ヒラリー・クリントン陣営にとって政治的に屈辱的な大量のメールが数日中に「ドカッと漏れる」と聞かされたと、トランプ氏に伝えた。

これに対してトランプ氏は、「だったら最高だ」というような意味のことを言ったと、元弁護士は証言した。

大統領選の最中にウィキリークスが民主党全国委員会(DNC)幹部のメール約2万点を公表したことについて、トランプ氏はこれまで、事前にはまったく知らなかったと主張している。

ウィキリークスが公表した民主党幹部のメールについて、米情報当局は、ロシア情報機関がハッキングしたものとみている。クリントン氏を大統領候補に指名した民主党全国党大会の前に公表され、クリントン氏と予備選を争ったバーニー・サンダース上院議員(バーモント州選出)をDNC幹部が妨害しようとしたという内容が明らかになり、民主党の分断が浮き彫りになった。

ストーン被告はかねてから汚い手段も辞さない政界のフィクサーを自任しており、ウィキリークスとのやりとりについて議会に偽証し、証人を買収したなどの罪で起訴されている。

ロシア人弁護士との面会も事前承知か

コーエン元弁護士は、2016年6月にトランプ氏の長男や陣営幹部がニューヨークのトランプ・タワーで、クリントン氏の「汚い」情報を提供するというロシア人弁護士と面会したことについて、トランプ氏はこれまで繰り返し事前には知らなかったと主張してきたものの、実は前から知らされていたようだと証言した。

トランプ・タワーでのロシア人弁護士との面会は、2016年米大統領選へのロシア介入疑惑を調べてきたロバート・ムラー特別検察官の捜査対象になっている。ムラー検察官は近く、捜査を終了させ報告書をまとめる見通し。

面会についてコーエン元弁護士は、トランプ氏の長男が机を前にする父親の後ろに近づき、低い声で「会議の手はずはばっちりです」と伝えるのを目にしたと証言した。これに対してトランプ氏は、「そうか、分かった。どうなったか教えてくれ」と息子に答えたと、元弁護士は下院に述べた。

一方で、コーエン元弁護士は宣誓下で、トランプ氏や陣営がロシアと結託したという直接証拠は持っていないと証言した。

「(証拠は)持っていません。それははっきりさせておきたい。けれども疑ってはいます」と、元弁護士は下院監視委で述べた。

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人種差別発言は

コーエン元弁護士は下院議員たちに、トランプ氏は人種差別主義者だと証言した。

「黒人がトップにいる国で、『肥溜め』じゃない国をひとつでも言えるかと、彼に聞かれたことがある」、「これは、バラク・オバマが合衆国大統領だった時です」と元弁護士は述べた。

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「シカゴの困窮する地区を車で通った時には、(トランプ氏は)あんな暮らしができるのは黒人だけだと言った。そして、黒人は頭が悪すぎるから、絶対に自分には投票しないと言った。なのに私は、あの人のために働き続けた」

トランプ氏については米紙ワシントン・ポストが今年1月、大統領がホワイトハウスで超党派の移民政策を上院議員たちと協議した際に、ハイチやエルサルバドル、アフリカ諸国からの移民について、「肥溜めみたいな国からなんであんなにやってくるんだ」と発言したと伝えた(訳注:「肥溜め」の原文は「shithole」で、直訳すれば「くその穴」。英語圏では公の場での使用はマナー違反とされ、複数の米紙やテレビ局が本件で初めて報道で使用した)。トランプ氏はこれについて、自分は「厳しい」言葉を使ったが、非難されている単語は使っていないとツイートしたほか、自分は「人種差別主義者ではない」と報道陣に反論した。

不倫相手への口止め料は

コーエン元弁護士は、トランプ氏の不倫相手とされるポルノ女優に自分が口止め料として支払った金額を、トランプ氏が払い戻した証拠だという資料を提出した。

元弁護士は下院委員会に、自分がストーミー・ダニエルズ氏に13万ドル(約1400万円)を振り込んだ際の振込み票の写しを提出。この支払いによって、元弁護士は選挙資金法違反で有罪となった。

元弁護士はさらに、2017年4月の日付の3万5000ドルの小切手を提示。トランプ氏が自分に分割払いで、口止め料を払い戻したのだと説明した。

「ファーストレディにうそをついたことを、特に後悔している」と、元弁護士は述べた。「あの人は優しい、善良な人です。とても尊敬していて、あんな仕打ちを受けるいわれはなかった」。

下院委の反応は

下院監視・政府改革委員会の共和党委員たちは公聴会で繰り返し、議会への偽証で有罪となった人物を議会証言に招いた民主党を非難し続けた。

ジム・ジョーダン議員(共和、オハイオ州)は、コーエン元弁護士を「詐欺師」の「いんちき」だと呼んだ。

しかし、民主党のイライジャ・カミングス委員長(民主、メリーランド州)は、真実を見つけることが委員会の仕事だと述べ、公の場でコーエン元弁護士に発言の機会を与えるのは重要だと主張した。

昨年11月の米中間選挙で野党・民主党が下院の多数党となったため、下院監視委員会の委員長は民主党のカミングス議員が務めている。

公聴会の後、トランプ氏は大統領在任中に犯罪を犯したと思うかと質問されると、カミングス委員長は「そのようだ」と答えた。具体的にどのような罪かは、答えなかった。

<解説> おのではなくハイヒールを武器に――ポール・ウッドBBC国際問題編集委員

マイケル・コーエンは、トランプ氏に命令された犯罪の責任を自分が負わされることに激怒している。最近のコーエン元弁護士を知る人は、誰もが口を揃えてそう言うだろう。

この機会に向けて何週間もかけて、弁護団に特訓されてきた様子だ。大統領に致命傷を与えるつもりでいる。

これに対してホワイトハウスは、コーエン元弁護士が「汚名にまみれたうそつき」で「偽証罪で有罪となった男」だというのを反論の焦点にし、(ドナルド・トランプ・ジュニアなどを通じて)広めている。

コーエン元弁護士はもちろん、自分の証言でも認めたように、信用性に問題がある。

だからこそ、議会では斧(おの)を振り回すのではなく、細く鋭いハイヒールを武器にしようとしているのだ。糾弾する内容ひとつひとつを「反論できない書類」と呼ぶもので裏づけながら。だからこそ、トランプ氏が署名したように見える小切手が、劇的に登場したのだ(ストーミー・ダニエルズの口止め料の払い戻しだという)。

一方で、トランプ陣営がロシア当局と結託したかどうかについては、あまり発言しなかった。実際、結託について直接知らないと言明した。

ただし、ロシアが民主党からハッキングしたメールをウィキリークスが大統領選中に公表するのを、トランプ氏が事前に知っていたことを示す会話を電話でしているのを、目撃したとは証言した。

もし本当なら、これは非常に重要なポイントとなる。トランプ氏は一貫して否定してきたので。

(英語記事 Michael Cohen: Ex-lawyer tells Congress Trump directed lies