通行証没収、今回の提訴のいずれにおいても、ホワイトハウス記者会は「CNNを強く支持する」という声明を出し、ニューヨーク・タイムズやトランプ支持の傾向の強いFOXニュースまでもが同調しているのだから、政権側の主張は筋違いであることは明白だ。

 合衆国大統領は強大な権限を持つ世界一の権力者だ。それだけに不愉快な質問も堂々と受けて立って懇切に自らの立場、主張を説明しなければなるまい。大統領はしばしば、「鉄の男、女」であることが求められる。

 どんな状況にもたじろがず、うろたえず、欲望や誘惑にも負けないー。過去の大統領のスキャンダルをみてくると、とうてい望めない求めであることは明白だが、トランプ氏の今回の態度はひどかった。

 トランプ氏による今回のメディア攻撃は、はからずも、中国による言論統制を想起させた。

 中国の言論、人権弾圧については、世界中で何度となく報じられているので、いまさら触れる必要はなかろうが、わが国も関係するつい最近のケースに触れておきたい。

 10月10日、北海道・洞爺湖で開かれた日中与党協議会で、中国の宋濤中央対外連絡部長が発した言葉。「与党は民意と世論をリードする役割を持っている」「真実を報道するよう働きかけ、不正確な報道は訂正してもらう」-。

 こんなことを言い出されては日本側も迷惑だったろう。さすがに菅官房長官は「報道の自由は国際社会の普遍的な価値だ」と苦々しくコメントせざるをえなかった。

 中国の報道の自由への侵害については、産経新聞社は何度も〝被害〟にあっている。最近の例では、2018年6月、日本記者クラブが訪中記者団を派遣しようとしたところ、産経の記者だけがビザ発給を拒否された。記者クラブ側は抗議の意を示すため、訪中そのものをとりやめた。
2018年12月、記者会見する中国外務省の華春瑩副報道局長(共同)
2018年12月、記者会見する中国外務省の華春瑩副報道局長(共同)
 個人のことになるが、1996年11月、当時ワシントン特派員だった筆者は、クリストファー米国務長官(当時)の訪中を取材しようと各国記者と同様にビザを申請したが、筆者だけがやはり発給を拒否された。紙面で事実関係を報じ、ワシントンの中国大使館に説明を求めようとしたが、先方は電話にすら出ようとしなかった。

 産経新聞の中国に対する報道姿勢が気にくわないらしいが、手厳しい質問を浴びせた記者の通行証を取り上げるというトランプ大統領の行動は、これと違わない。

 考えてみれば、メディアへの弾圧は世界各地でみられる、メディアにとっては受難の時というべきか。

 トルコ・イスタンブールのサウジアラビア総領事館で、自国政府に批判的な報道を続けてきたサウジ人記者が殺害された残虐な事件は論外としても、われわれの身近、日本国内でも報道の自由に対する政府、国民の無理解ぶりを、残念ながら感じることが時にある。