高橋洋一(嘉悦大教授)

 政府は2月12日、電波法改正案を閣議決定し、国会に提出した。次世代無線方式「5G」などで、電波の割り当て審査に価格競争の要素を導入するためだ。

 全面的な電波オークションの導入ではないが、部分的なオークション化ともいえるので、じわりじわりと一歩前進である。と同時に、電波利用料の引き上げも盛り込まれている。

 筆者は、電波オークションがベストと考えている。そうなれば、電波利用料は今より1、2桁増加するだろう。そもそも電波は、希少性のある国民共有財産である。それを不当に安く使っているのが今のテレビ界であり、その是正のためには、これも一歩前進だ。

 放送制度改革は急がれているが、今の放送業界が既得権益となってなかなか進んでいない。

 筆者は官僚時代の2006年当時、竹中平蔵総務大臣補佐官を務めたことがある。そのとき、筆者はもっぱら郵政民営化と地方財政を担当していたので、放送行政は担当外だった。当時は、通信と放送の融合にあわせた放送制度改革が議論されていたので、ちょっとのぞき見をしていたくらいだ。

 当時の門外漢から見れば、放送法で規制されていることが、通信技術の発展によって有名無実化するので、放送制度改革を急がなければならないという「常識的」なもののように感じられた。ところが、実際には放送の既得権が政治を動かし、全く改革は進まなかった。
2005年10月、第3次小泉改造内閣発足後の記念撮影が終了し、安倍晋三官房長官(左)と話をする竹中平蔵総務相(小野淳一撮影)
2005年10月、第3次小泉改造内閣発足後の記念撮影が終了し、安倍晋三官房長官(左)と話をする竹中平蔵総務相(小野淳一撮影)
 総務省在籍当時、筆者の仕事部屋は大臣室の隣にある秘書官室だった。筆者とは面識のない多数の方が秘書官室に訪れ、名刺を配っていく。筆者も秘書官室の一員であるので、名刺を頂いた。それを見ると、メディア関係の方々だ。その中には「波取り記者」と呼ばれる人も含まれていた。

 「波取り記者」の「波」とは電波のことだ。「波取り記者」とは、記事を書かずに電波利権確保のために電波行政のロビイングをする人たちだ。こうした人は新聞業界にもいた。