そもそも、1945年に第二次世界大戦が終結した当時、政府部門や財界に残っていた世代はすでにいない。しかも、その世代の多くは韓国を代表する民族紙『東亜日報』を創刊し、民族系企業を多く起こした金性洙(キム・ソンス)氏のような「愛国者」で、彼らは「自民族の実力向上」を目指して日本に学ぶべきものは学びながら、韓国の近代化に貢献した人たちだ。

 一方、文大統領の政治の師匠と言われる盧武鉉(ノ・ムヒョン)氏は、大統領在任中に「親日反民族行為の真相糾明に関する特別法」を制定(2004年施行)したが、今なお清算されずにいるという「親日」とは、この世代の次の世代だ。

 一時期、これらの世代の「親日」派から財産を没収する動きもあったが、このように国民を分裂させる「親日清算」が韓国にとって利になるはずがない。

 また、文大統領は著書でも度々「親日」について言及している。文大統領によれば、戦前の日本帝国主義の植民地統治に協力した勢力が終戦後反共を建前に「反共勢力」に変身、後の産業独裁勢力に変わり、ひいては金や権力を持つ既得権益者となり、今の韓国の保守勢力の中核をなす。大ざっぱに言えば、「親日勢力=保守勢力」という図式になる。

 これらの勢力を「きれいになくす」という発想は、階級闘争論を理想とする社会主義国家にありそうな典型だ。北朝鮮のような社会主義を標榜する国家では、人民を戦前に携わってきた職業、家柄によって敵対階級、団結すべき階級、優遇すべき階級に分け、敵対階級を清算したが、国民を敵と味方に選別しようとする発想は、自由な民主主義国家ではあってはならないことだ。

 これまで、戦後の日本と韓国は、民主主義と市場経済という共通の価値観に寄り添って有効を育んできた。日韓両国民は、世界中のどの国の国民同士より互いを理解し、親しんできたはずだ。

 そのような良好な関係が歴史問題で不協和音が生じた場合、それをなだめ、未来志向的な見地に立って、国民をリードするのが政府の役目のはずだ。しかし、「三・一独立運動」100周年を迎え、文大統領から発せられるメッセージは、逆だった。国民をみだりに煽(あお)る行為と受け止められても仕方のないものだ。
独立運動家、金九の記念館で開かれた閣議で発言する韓国の文在寅大統領(中央)=2019年2月、ソウル(韓国大統領府提供・共同)
独立運動家、金九の記念館で開かれた閣議で発言する韓国の文在寅大統領(中央)=2019年2月、ソウル(韓国大統領府提供・共同)
 戦後日本が韓国の経済繁栄に手を貸した事実は誰も否定できない。さらに日本は、冷戦体制下で韓国とともに、北朝鮮や共産主義勢力と闘った仲でもある。このような最近の記憶は忘却し、100年前の記憶を呼び起こそうとする発想は先にも記したが、時代錯誤的としか言いようがない。

 文大統領が「三・一独立運動」記念日を大事することについて、批判するつもりはない。しかし、日本の過去を責める手段として、「親日」の保守系勢力つぶしだけでなく、北朝鮮との連携強化や左派勢力を結集するための政治ショーとして利用するつもりであれば、文大統領は「歴史の罪人」として刻まれることになるだろう。

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