湧口清隆(相模女子大学教授)

 わが国では、電波利用料制度は1993年に導入され、2005年に料金体系が大幅に変更されています。しかし、電波利用者が電波利用にかかる共益費用を負担する、いわば受益者負担の制度であるという性格は、導入から四半世紀経過した現在でも変わっていません。ただし、共益費用の範囲や料金体系は時代とともに常に変化し続けています。

 私自身は、2005年と2008年の改正の際に総務省の研究会構成員として、改正の議論に参加しました。その立場から申し上げると、2019年の改正は抜本的な見直しとはいえませんが、二つの点で驚きがあります。

 まず、通常3年ごとの見直しですので、本来であれば今年は改正年ではなかったはずです。

 それにもかかわらず改正をするという背景には、官邸主導の規制改革推進会議から強い要請があったことは事実でしょう。実際、それは2018年6月に発表された「骨太の方針2018」や2017年12月に発表された「新しい経済政策パッケージについて」にみることができます。

 その意味で放送業界から声が上がっているように、「改定が1年前倒しされ、放送事業者の多くは予期せぬ『値上げ』を強いられることになる。適用期間の流動化は放送事業者にとって経営上のリスク」(改正に対するパブリック・コメント)になることは事実です。

 しかも、これまで「負担額は改定前の2割程度」だった激変緩和措置が、今回5割に拡大されたため、各社の2019年度の予算に億単位の大きな影響が出てきてしまいました。過去にそのような例がないかといえば、人工衛星局のように2005年の改正時には数千倍ものオーダーで値上がりした無線局もありました。
※写真はイメージです(ゲッティイメージズ)
※写真はイメージです(ゲッティイメージズ)
 次に、通信事業者と放送事業者との間で長年繰り広げられた「公共性」論争に、総務省がよく決着をつけたという点です。通信で届けられる内容は「通信の秘密」で守られた私信であり、放送で届けられる内容は「番組調和原則」や集中排除原則で規制された公共性の高い通信であるという論理から、従来は放送には「公共性」を見いだせるが、通信には見いだせないとして、電波利用料を割り引く特性係数は放送のみに適用されていました。

 しかし、近年、災害時の救助要請や情報伝達において会員制交流サイト(SNS)の活用が進んでいます。結果、私信だから「公共性」が小さいという議論の根拠が薄れ、携帯電話にも同様の「公共性」を適用すべきだ、という通信事業者や国民からの主張が強くなってきました。

 そこで今回、携帯電話事業者へも特性係数を適用することになりました。そのため、電波利用料の歳入全体の約85%を占めていた携帯電話事業者の負担割合が減り、10%弱しか占めていなかった放送事業者の負担割合を大きく増やすことになったのです。しかも、共益費用の範囲や金額が拡大したことから、基幹放送事業者の料金改定は極めて大きな額、大きな変動率になりました。