森本敏(拓殖大学総長、元防衛大臣)

 昨年12月に発生した韓国駆逐艦による海上自衛隊P1哨戒機に対する火器管制レーダー照射事案について、防衛省は今年1月21日に最終見解を公表した。照射されたレーダー波等を解析した結果、P-1が韓国駆逐艦の火器管制レーダーからレーダー波を一定時間継続して、複数回照射されたことを確認しており、この点については、公表されているP-1の動画および探知時の音からも明らかである。

 韓国では、駆逐艦の火器管制レーダーと、同艦艇の近くにいた韓国海上警察巡視船舶のレーダーがよく似た周波数なので誤作動してP-1に届いたという報道もあるが、周波数特性は専門家が分析すれば分かることであり、このような説は全く信用できない。

 いずれにしても、韓国側はレーダー照射を行っていないという主張を今まで繰り返してきたが、日本側が示す客観的根拠を覆すような、説得力のある具体的な証拠や論拠を示していない。

 このような火器管制レーダーの照射は不測の事態を招きかねない極めて危険な行為であり、CUES(洋上で不慮の遭遇をした場合の行動基準で、日韓ともこれに合意している)において控えるべき動作として規定されており、韓国側は自らがとった不適切な行動を認めて、日本側に謝罪してしかるべきである。

 日本側が公表した根拠について、韓国側がレーダー照射の事実を否定する発言を繰り返してきた理由は必ずしも明確でない。韓国側はその主張の根拠となるデータは機密なので公表できないとしているが、データを公表すると日本側の示す根拠の方が正しいということになり、不利になる恐れがあると考えている可能性はある。

 いずれにせよ、レーダー照射について日韓間でここまで問題が大きくなった背景にはどのような理由があったかは定かでないが、韓国海軍側に何らかのミスマネジメントがあった一方で、韓国首脳部は国防部あるいは合同参謀本部から報告を受けて、一貫して韓国側に瑕疵(かし)はないという立場に立って対応し続けてきたことにあると思われる。
海上自衛隊のP1哨戒機(ゲッティイメージズ)
海上自衛隊のP1哨戒機(ゲッティイメージズ)
 しかし、その根拠を内外に示しえない状況下でレーダー照射の議論を続けることは不利と判断したものと考えられ、1月14日のシンガポールでの日韓協議以降、韓国側はレーダー照射問題をあまり取り上げなくなっている。

 一方、日本側としては、韓国側が根拠を示さずに事実を否定するだけの態度を続けている限り、これ以上の協議を続けても意味がないので、最終見解を示すとともに協議を打ち切ることにした。この措置はそれまでの協議経過を評価すれば適切であったと考える。