韓国側は、韓国駆逐艦の近くで活動していた韓国海上警察巡視船舶が北朝鮮船舶から3人の遭難者を海難救助し(他の1名は遺体であったと報じられている)、その後、板門店経由で北朝鮮側に送り返したと説明している。

 日本側に、この遭難者について工作員、スパイあるいは、瀬取りとみられる行為(何らかの金品の授受)があった可能性について言及する専門家がいるが、①その根拠は不明確であること②韓国はこれを米軍、国連にも届け出て、遭難者として北朝鮮に送り返したところを見ると、彼らが何らかの不法行為に関わったとは考えにくいこと③仮に、いかなる背景事情があるにせよ、韓国駆逐艦によるレーダー照射や低空脅威飛行なるものがあったか、なかったかという議論を説明する論拠にはなりにくい等の理由から、本件問題はレーダー照射、低空脅威飛行事案と直接の関係があったとは考えにくい。

 韓国は、結果としてレーダー照射の問題について日本側に反論することより、論点をP-1の低空脅威飛行に切り替えて、攻勢に出ようとしたものと考えられる。ただ、この低空脅威飛行についても韓国側が示した写真、例えば、P-1の飛行の様子を艦艇から撮影した写真は、それ自体、P-1の飛行高度を客観的に示す証拠となっておらず、十分説得力のあるものになっていない。

 韓国側は日本のP-1が韓国駆逐艦に対する低空脅威飛行を行ったと指摘しているが、当該P-1はルールに基づき十分な高度と距離を確保して飛行しており、韓国駆逐艦の活動を妨害するような飛行を全く行っていない。P-1の飛行が韓国側から見て不法な行動であると認識したのであれば、韓国駆逐艦から速やかに、同機に対して無線によって指摘し、やめるよう求めるべきであったのに、韓国側は全くそのような措置をとっていない。

 しかし、後日になって低空脅威飛行と言い始めたのは、韓国の国内世論を意識して、火器管制レーダー照射に関する重要な論点を希薄化させるため、あるいは、論点のすり替えを行いつつ、反転攻勢に出るための主張なのではないかと考えざるを得ない。

 いずれにしても、本件事案についての韓国側の主張には明確な根拠がなく、日本側としては、韓国側が本件事案の事実関係を適正かつ冷静に受け止め、再発防止を徹底するよう期待する旨を強調してきた。日本側は当然のこととして、日韓および日米韓の防衛協力関係は東アジアの平和と安定にとって極めて重要な役割を果たしているものと認識しており、今後とも日韓および日米韓の防衛協力に努めていくこととしている。
記者会見する韓国軍幹部=2019年1月、ソウル(聯合=共同)
記者会見する韓国軍幹部=2019年1月、ソウル(聯合=共同)
 しかし、防衛当局間の相互不信は末端部隊の構成員にまで影響を与える可能性があり、日韓双方の部隊活動が海空域で相互に接近する場合、いつ不測の事態や予期せぬ偶発事故が発生するかもしれないという恐れがある。かかる不測の事態を防ぐために、まず日韓双方の意思疎通を図る努力を行うことが求められる。

 さらには、こうした観点に立って、日韓双方とも両国関係の将来を展望し、冷静に議論を進めることに努め、日韓関係の現状をできるだけ早く良好なものにするよう率直な対話を行うプロセスの中で、再発防止のための枠組みについて協議していくべきものと考える。