2019年03月05日 12:37 公開

ギャヴィン・スタンプ、BBCニュース政治記者

イギリス議会は2月末、ブレグジット(イギリスの欧州連合離脱)を延期するかどうかをあらためて下院で採決するという案を、圧倒的多数で可決した。

この採決は、議会がテリーザ・メイ首相の欧州連合(EU)離脱協定を否決し、さらに法的拘束力のある包括的な合意なしでの離脱、いわゆる合意なしブレグジットも否決した場合に行われる。

3月29日の離脱期限まで1カ月を切っているが、イギリス議会はまだ離脱協定を承認していない。

メイ首相は2度目の「意味ある投票」の日を3月12日に定めた。下院議員たちが協定を支持すれば、2週間後には協定に則ってEUを離脱できると主張している。

もし議会がブレグジットの延期を決めたとしても、メイ首相は「最低限の」遅れにとどめたい方針だ。また、たとえ離脱日が年内に延期されても、合意なしブレグジットの可能性は排除しないという姿勢を堅持している。

ではもしイギリスが3月29日にEUを離脱しなかった場合、それは一体いつになるのか?

4月半ば?

まず最初に指摘すべきことがある。EU基本条約(リスボン条約)第50条に定められた2年間の離脱交渉期間を延長しブレグジットを延期するには、イギリスと全EU加盟国、双方の承認が必要となるのだ。

これについてEUの態度はどちらとも言い切れない。一部のEU高官からはブレグジット延期がまともな判断だという発言が出ているが、延期するだけの十分な理由が必要だという声もある。

仮にEUが延期を承諾するとして、最初の候補日は4月18日とされる。ちょうど、イースター直前の聖木曜日だ。

この日は、5月の欧州議会選挙を前に同議会がブレグジットについて投票できる最後の日だという。この選挙については後ほど説明する。

離脱協定の決定には欧州議会議員の承認が必要だ。英下院は昨年12月、EUとイギリス政府がまとめた離脱協定を432対202の歴史的大差で否決したるが、欧州議会議員はまだ採決をしていない。

英下院の懸念事項について、イギリス政府とEUが期日までに協定を変更できない場合(EU首脳会談は3月22日まで行われない)、あるいはメイ首相が12日の議会で協定の承認を得られなかった場合、関係者は協定を「何とか通す」ために体勢を立て直すだろう。その猶予を与えるための、短い「技術的な」遅れが認められる可能性もある。

その結果、イギリス議会が3月末か4月初めに離脱協定を承認すれば、欧州議会議員もそれに倣うとみられている。もっとも、これほど直前のタイミングで全加盟国の承認を得ようとするのは、リスクを伴う。

それに、これほどギリギリなスケジュールで、イギリスは秩序ある離脱の準備ができるのだろうか?

5月末?

イギリスの下院議員が離脱協定を承認するかどうかにかかわらず、離脱日の決定には他にも複雑な要素がある。

まず、3月29日の離脱日はイギリス議会が昨年承認したEU離脱法に明記されている。この法律は改定する必要があるが、これは行政委任立法で比較的、簡単にできるだろう。

さらに、メイ首相はEU離脱協定を議会にかけて国内法にすると約束している。こうした手続きは通常、下院と上院を通るまでに何カ月もかかるものだ。

メイ首相は、離脱協定の法定手続きは最短で行うとしているが、議員の中には2週間では正式な議論ができないと騒ぎ立てる人もいるだろう。

ここで、新たな離脱日として5月23日前後という2つめの選択肢が出てくる。これにより、イギリスはEU離脱に向けて丸2カ月かけて、じっくり準備できることになる。

この日程なら、イギリスは5月23~26日に行われる欧州議会選挙の結果が出る前に離脱することができる。イギリスは、この選挙には一切かかわらない。

保守党で首相の協定を支持している「EU離脱実現グループ」のサイモン・ハート議員は、ブレグジット延期を5月23日までと「厳密に限定する」という修正案を提出したものの、首相が議員に「私の手を縛らないでほしい」と求めため、取り下げられた。

6月末?

イギリス政府とEUが、アイルランドと英・北アイルランドの国境をめぐる「バックストップ」条項について解決策を見出す見通しが付かなかった場合、ブレグジットはさらに遅れる可能性がある。

EU離脱を3カ月以上、6月末まで遅らせるのは、双方にとって理想的な選択ではない。

しかし、交渉にもっと時間が必要だということは認めてもらえるだろう。特に、英下院が承認するかも分からない譲歩をすることに、EUは乗り気でないと言われているだけに。

EU離脱を決めた国民投票から3周年に当たる6月23日に離脱するのは、多くの離脱派を喜ばせるだろう。しかし欧州議会での承認が未決事項として残ることになる。

5月の選挙で新たに選出された欧州議会議員による最初の審議は、7月初めになる予定だ。もっとも、事前に臨時議会を招集してもいいし、ブレグジット協定を事後承認することも可能だ。

関係者には、7月末までに離脱プロセスを全て終らせて方をつけたい、大きな動機がある。政治的にも、もっと卑近な理由から。誰も夏休みの計画を、できるだけ邪魔されたくないからだ。

2019年後半、もっと後?

7月末にもブレグジットが決まらず、日照時間が短くなってくる頃には、事態はさらに複雑になる。

EU側はブレグジットの手続き延長を1度は認めるかもしれないが、延期に次ぐ延期を何度も繰り返すなど受け入れないだろう。それに、イギリスで総選挙か2度目の国民投票が行われない限り、長い空白期間は許されないだろう。

一方でEU高官からは、ブレグジットを2021年まで延期しようという案も出ていると報じられている。ブレグジット後に予定されていた、イギリスとEUの将来の関係性の交渉もそれまでに終わらせ、バックストップの問題もまとめて解決してしまおうという考えだ。

しかし、これはイギリスの保守党議員や何百万人ものEU離脱派が受け入れないだろう。これでいくと、イギリスは2016年の国民投票から5年以上たってもまだEUに留まり続けることになるからだ。

また、欧州議会の選挙という、ささやかな問題もある。イギリスは5月の欧州議会選挙後、ブリュッセルやストラスブールに代表を送らないまま、いつまでもEUに留まっていいのだろうか?

メイ首相はこれは現実的ではないとしているが、シンクタンクの政府研究所(IfG)などによると、この問題を回避する方法はある。少なくとも、当面は。

たとえば、イギリスの現職欧州議会議員を投票権のない「オブザーバー」の立場で参加させる方法や、EU加盟直後のルーマニアやブルガリアが行っていたように国家代表を送り込む方法などが考えられる。

あるいは、イギリスが一時的な措置として73人の欧州議会議員を選び直すという選択肢もある(そうしなければこの議席は他の国に割り当てられてしまう)。この場合、残りのEU加盟国とは別のタイミングで投票を行う。

しかしこれにかかるコストは議論を呼びそうだ。また、ナイジェル・ファラージ欧州議会議員が新しく参加したブレグジット党などに、裏切り者と糾弾されてまで、保守党は欧州議会議員候補を出すだろうか?

(英語記事 Brexit: If not 29 March, then when?