実は、防衛省高官によると、P1哨戒機による韓国艦艇発見は「米軍からの通報」によるものだったという。事件の背景には「日米海軍の共同作戦」があった。米軍は、偵察衛星で韓国海軍艦艇の動向を追跡していたわけだ。韓国側は「秘密の作戦行動」がバレたと心配し、日米共同作戦潰しを考えたのではないか。

 一方で、韓国側の一連の対応を見ると、最初から大統領府の指示で「作戦活動」が行われていたと考えられる。韓国海軍艦艇の「作戦活動」が大統領府と直結していなければ、「自衛隊機を追っ払え」という指示と報道官の「照射全面否定」への態度変更は理解不能だ。

 韓国の軍関係者によると、問題海域への海軍艦艇と海洋警察船の派遣は、本来は韓国漁船保護のために行われていたという。ただ最近は、北朝鮮からの要請があれば、北の遭難船救助にも乗り出していた。

 この活動の過程で、北朝鮮漁民を「スパイ」として活用する、いわゆる「レポ船作戦」も展開された。今回の事件も、「レポ船」(レポ=レポート、非公然の連絡に使う船)との接触現場を自衛隊機に発見されたので、慌てて「遭難漁民救助」と説明したために混乱を招いた。韓国側が、北朝鮮に送還した漁民の名前や所属を明らかにせず、写真も公表していないのはおかしい。

 韓国の取材記者は、北朝鮮のクーデター未遂事件との関連を指摘する。東京新聞は昨年12月11日に、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の警護をする「護衛司令部」幹部が粛清された、との特ダネを報じた。

 護衛司令部は絶大な権限を持ち、決して調査対象にはならない部局だ。粛清の背景には、クーデター未遂事件があったとされる。クーデターに関連した軍幹部が「レポ船」を利用し、韓国への亡命を図ったというのだ。この「救助」により、「亡命者」は北に送り返されたことになる。

 さらには、韓国の専門家の間では、南北首脳会談の「面会料」の受け渡し作戦を海上で展開していた、との見方も出ている。南北首脳会談に際して、韓国側が「面会料」を支払うのは常識だからだ。

2011年9月、曳航される脱北者が乗っていたと見られる船(手前)と海上保安庁の船=石川県輪島沖(産経新聞社ヘリから)
2011年9月、曳航される脱北者が
乗っていたと見られる船(手前)と
海上保安庁の船=石川県輪島沖(産経新聞社ヘリから)
 2000年に金正日(キム・ジョンイル)総書記との会談を実現させた金大中(キム・デジュン)元大統領は、わかっているだけで5億ドル(約500億円)の現金を支払った。総額では10億ドル(1千億円)といわれる。民間人も、指導者との会見には3億ドル(約300億円)を支払った。北朝鮮の指導者には、タダでは会えないのである。

 この現金を支払わないと、南北首脳会談は実現しない。しかし、米ドル建ての送金は国連制裁違反だ。米国にバレないよう、ドル資金をどのように渡すかに、文大統領の側近たちは苦心してきた。銀行送金はできないし、陸上輸送にも米国の目が光る。困り果てた大統領府は、海上での受け渡しを考えた、というのだ。

 今回の遭難漁船が受け渡し船かどうかは不明だが、海上での「接触作戦」の最中に事件が起きたと考えれば、大統領府による介入と執拗な「接近禁止」要求も理解できる。南北「海上受け渡し作戦」の情報を得た米国が偵察衛星で監視していた。そう考えなければ、韓国側の「狂気の対応」は理解できない。