たとえ、百歩譲って、韓国艦艇が危険を感じたのだとしても、突然、FCレーダーを照射するのは、友好国の海軍としては非常識な行為と言わざるを得ない。国際社会に構造的変化が起きようとし、アジア太平洋地域の安全保障環境が変化しようとしている現在、日本と韓国は本来、米国の同盟国として協力しなければならないにもかかわらず、あたかも日本が友好国ではなく敵対国であるかのように振る舞った韓国海軍の行為は、日本政府としては受け入れられないだろう。

 韓国海軍は、海上自衛隊哨戒機の飛行も、韓国艦艇の行為の意味も理解しているはずだ。韓国メディアは、とにかく韓国が日本に屈することが許せないかのような論調を展開するが、日本は、韓国に謝罪を求めた訳ではなく、問題を拡大したい訳でもない。それでも、客観的な事実に基づいて再発防止を図らなければ、相互の信頼を取り戻すことは難しい。

 防衛省が公開した動画も、韓国海軍艦艇からFCレーダーを照射されたことを完全に証明するものではないが、一方の韓国が公開した映像は、韓国側の主張を裏付ける証拠にはなっていないばかりでなく、奇異な印象すら受ける。韓国自身も、「韓国の正当性を訴える映像」と言っており、証拠を示すとは言っていない。

 韓国側が提示した情報は最初の十数秒であり、韓国側が撮影したこの画像を見ても、海上自衛隊機が、150メートルよりも高い高度で、遠方を飛行しているように見える。残りの部分は、P1哨戒機が撮影した映像を用いている。そして、映画の予告さながらに、BGMを流し、日本の主張に対する疑問を文字で画面上に強調する。こうした表現から、韓国の目的は、見る人に韓国の主張が正しいという「印象を与える」ことなのだと理解できる。

 動画において、韓国は何ら証拠を示さなかったばかりでなく、画面に示した疑問の内容にも問題がある。韓国は「日本の哨戒機はなぜ人道主義的救助作戦現場で低空威嚇飛行をしたのか?」としているが、まず、P1哨戒機の飛行を「威嚇飛行」と断定していることが問題である。さらに、万が一、韓国艦艇が危険を感じたのであれば、通信を設定して海上自衛隊機の目的を確認するべきである。問題は、通信も設定せずに、いきなりFCレーダーを照射するという暴挙に出たことなのだ。

 韓国は、この根本的な問題の解決に寄与する情報を示していない。一方で韓国は、あたかも軍用機には、国際民間航空機関(ICAO)の「航空機が維持すべき高度および距離のクリアランスに係る基準」よりも厳しい基準が適用されるかのような表現を用いているが、本来、攻撃行動を含む運動を行う軍用機には、こうした基準は適用されない。海上自衛隊の哨戒機も、対潜戦を実施する際などは、より低い高度で飛行し、日常的に訓練されている。しかし、こうしたことを知らず、P1哨戒機が150メートル以下の高度で飛行したという韓国政府の主張を信じてしまったら、日本の哨戒機が危険な行為に及んだと印象付けられてしまう。
※写真はイメージです(GettyImages)
※写真はイメージです(GettyImages)
 2019年1月15日に行われたこの問題に関する日韓防衛当局間の協議について、韓国国防省は当日の記者会見で、「日本が、自ら保有するレーダー情報の一部の開示と引き換えに、駆逐艦のレーダー情報全体の開示を要求してきた」として、「日本は無礼だ」と述べた。「一部」と「全部」を引き換えにすることが不公平だと主張しているが、日本が提示するものと韓国が提示するものは内容が異なると考えられるので、単純比較できるものではない。