日本の提案は、日本が探知した電波情報を提示し、韓国側がFCレーダーを照射したとされる駆逐艦のレーダー電波の諸元等を提示して、二つを照合するものだと考えられる。異なる内容のものを並べて不公平だと主張することも、韓国のイメージ戦略と言えるだろう。

 この時、韓国側が、レーダー情報の照合を拒否したばかりでなく、音を聞くことすら拒否したことは、韓国政府には真実を明らかにすることより優先することがあることを示している。また、韓国側の実務者レベルは、文在寅政権の政治姿勢によって、自分たちで判断することを避けざるを得ない状況に置かれているかもしれない。

 このような政治的状況下で、韓国海軍を含む韓国軍が口を封じられている可能性もある。海上自衛隊と韓国海軍は、1995年から交流を開始し、協力関係を築いてきた。韓国海軍を含む韓国軍は信頼に足る優秀な軍隊である。全く過ちを犯さない組織や個人などあり得ない。問題は、そうした際に、どのように信頼を回復するかである。その方法を理解している良識ある韓国軍人が政治的に抑え込まれているのだとしたら、彼らに対して同情を禁じ得ない。韓国軍は民主主義国家の軍隊であることの意味を理解しているがゆえに、組織として文在寅政権の命令に背くことはないだろう。

 日韓防衛当局者間の協議において韓国側に情報照合を拒否された防衛省は、2019年1月21日、韓国海軍艦艇から火器管制レーダーを照射されたことを示すさらなる根拠として、音声データを公開した。これは、P1哨戒機が収集したFCレーダー波を音声に変換したものである。防衛省は、秘密に関わる情報が表出しないよう、音声に変更を加えている。
防衛省外観=2018年12月25日、東京都新宿区(川口良介撮影)
防衛省外観=2018年12月25日、東京都新宿区(川口良介撮影)
 これに対して韓国は、この音声は根拠にならないとして、これに対抗するように、P1哨戒機の写真、赤外線探査装置(FLIR)の探知画像およびレーダー探知画面を静止画で公表した。これら静止画を並べて見れば、これらが同一の目標に関する探知情報であるというイメージを与えることができる。

 しかし、これらも、2018年12月20日当日に、韓国海軍艦艇がP1哨戒機を探知したことを完全に証明するものにはならない。写真やFLIR画像は、P1哨戒機を撮ったことを示すだけである。また、レーダー画面は、時刻、目標の方位、距離、高度を示す信号がその装置に入力されたことを示すにすぎない。そもそも、探知目標の探知時刻や位置を完全に証明すること自体が極めて難しいのだ。