その後、韓国政府は、FCレーダー照射の有無に関する問題では分が悪いと思ったのか、本来の問題であるFCレーダー照射という危険行為を取り上げなくなり、代わって、海上自衛隊哨戒機の威嚇飛行を問題にしている。問題のすり替えである。

 しかし、問題の本質は、韓国側が危険だと感じたか感じなかったかということではない。もし、韓国海軍艦艇が、日本の哨戒機の飛行を危険だと感じたとしても、いきなりFCレーダーを照射するという危険な行為に及んだことが問題なのである。

 その理由は簡単だ。現在は、日本と韓国の間は戦争状態になく、それどころか日本と韓国はともに米国の同盟国であり友好国である。危険を感じる程に接近し過ぎていると感じたのであれば、まず、通信設定して、哨戒機の意図を確認する、あるいは、高度を上げるように要求するのが常識だろう。

 根源的な問題は韓国政府の認識だろう。航空機が近寄ったとしても、ただ飛行するだけでは具体的な攻撃の動作にならない。P1哨戒機は対艦攻撃能力を有するが、その手段である対艦ミサイルはパイロン(航空機の胴体や主翼から物を吊り下げるために使われる、前後に細長い板状の支柱)にしか搭載できない。「近かった」というのであれば、その航空機のパイロンにミサイルが搭載されていないことを目視で確認できたはずだ。韓国海軍は、もちろん、P1哨戒機の性能要目を理解している。友好国である日本の、しかも攻撃能力のない航空機が近傍を飛行したことに対して、「威嚇飛行」と主張する韓国政府の認識に大いに違和感を覚える。

 日本と韓国は、それぞれに求めているものが違うのかもしれない。日本政府は、このような行為が再発するかもしれない状況で信頼を回復することは難しいと考え、再発防止を求めている。韓国政府は、何よりも「日本に屈服したと見られないこと」を優先しているように見える。それでは、日本と韓国の主張がかみ合うはずもない。政府が相手国政府を非難する状況は、国民の感情を煽る結果を生んでいる。
日韓外相会談を前に握手する、河野太郎外相(左)と韓国の康京和(カン・ギョンファ)外相=2019年2月15日、ドイツ・ミュンヘン市内のホテル(力武崇樹撮影)
日韓外相会談を前に握手する、河野太郎外相(左)と韓国の康京和(カン・ギョンファ)外相=2019年2月15日、ドイツ・ミュンヘン市内のホテル(力武崇樹撮影)
 最大の問題は、米国の同盟国である日本と韓国が、地域の安定と平和の維持に向けて協力するための信頼を回復できないでいることである。日本は、再発防止策が議論されないどころか事実さえ明らかにならない状況は地域の安全保障環境を損なうものであることを理解し、現実的な対応を考えていかなければならないだろう。