舛添要一(前東京都知事、元厚生労働大臣)

 記者会見での質問の在り方について、菅義偉(よしひで)官房長官と、東京新聞社会部の望月衣塑子(いそこ)記者、そして彼女が所属する東京新聞との間で応酬が続いている。私も厚生労働大臣、東京都知事として記者会見を行ってきたので、そのときの経験も踏まえながら、今回のバトルについて記してみたい。

 第一の論点は、政府の記者会見とはどういうものなのか、また質問とはどういうものなのかという問題である。

 官房長官の側に立てば、それは記者の質問に答える場ということになる。言うまでもなく、記者の意見を政府が拝聴する場ではないし、質問する記者が事実誤認をしていれば、そもそも質問そのものが成り立たない。

 森友・加計学園問題や、米軍普天間飛行場の移設先である名護市辺野古沿岸部の埋め立て工事問題などをめぐる望月記者の質問に関して、2017年9月1日以来、官邸は繰り返し東京新聞に申し入れを行っている。むろん、東京新聞側もその都度回答している。

 そして、昨年12月28日、官邸は上村秀紀報道室長名で内閣記者会に対して文書を出した。「東京新聞側に対し、これまでも累次にわたり、事実に基づかない質問は厳に慎むようにお願いしてきました」として、「当該記者による度重なる問題行為については、総理大臣官邸・内閣広報室として深刻なものと捉えており、このような問題意識の共有をお願い申し上げる」と要請した。

2019年2月、首相官邸で開かれた菅官房長官の記者会見で、質問中の東京新聞の望月衣塑子記者(手前)に注意を促す上村秀紀報道室長
2019年2月、首相官邸で開かれた
菅官房長官の記者会見で、質問中の
東京新聞の望月衣塑子記者(手前)に
注意を促す上村秀紀報道室長
 これに対しては「取材の自由への侵害」などとして新聞労連が抗議声明を出したり、弁護士やジャーナリストらが文書撤回を要求したりしている。

 この点に関して、まずは記者の意見と質問とは混然一体としていることが多く、明確に線引きできるものではないことを指摘したい。例えば、「米朝首脳会談で合意に至らなかったことは失敗だと思うが、その失敗の理由は何だと思うか?」という質問をする記者に対して、「自分の意見を言った」と非難することはできないであろう。

 答える側が「自分は失敗だと思わない。その理由は…」と答えれば済む話だからである。したがって「会見は意見を言う場ではない」という主張はあまり説得力がない。