「24時間はもう限界」ブラック就労、店主の叫びはセブンに届くか

『木下徹郎』 2019/03/07

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木下徹郎(弁護士)

 2月からフランチャイズ契約に反して24時間営業を止めたコンビニ最大手、セブン-イレブン・ジャパンフランチャイズ加盟者の松本実敏(みとし)さんは、19時間営業となった今も1日13時間、大阪府東大阪市内の店舗で働いている。24時間営業をしていたときは1日16時間も就労していたという。

 筆者は中央労働委員会で、コンビニフランチャイズ加盟者を組織した労働組合が、労働組合法の適用を受けるかが争われている事件の組合側代理人として、複数の加盟者の就労実態に触れてきた。その経験から、松本さんが店舗運営上置かれている状況は、彼特有のものではなく、決して珍しくないものであると言える。またセブン-イレブンのみの問題でもなく、他のコンビニフランチャイズの加盟者に共通する問題である。

 なぜ松本さんのような就労実態が加盟者の間で多くみられるのか。全国の松本さんたちのような店舗の「運営の仕方」に問題があるせいなのか。確かに複数店舗を運営し、発注、接客、商品の検品、陳列、清掃等店舗実務はスタッフに任せ、自身はこれらに直接は携わらないという加盟者もいる。しかしその数は加盟者全体で見れば少ない。店舗運営の巧拙だけでは片付けられないフランチャイズシステムの構造的な問題に大きな原因があると考える。

 コンビニフランチャイズでは、フランチャイザーがコンビニシステムを提供し、加盟者は店舗の粗利益の一定割合をその対価(ロイヤルティー)として支払う。その割合は、フランチャイズの契約タイプによって異なるが、店舗の土地建物や什器(じゅうき)を所有しない加盟者だと、相当高いものである。

 他方で、加盟者はロイヤルティーを支払った残りから、人件費をはじめとする店舗運営にかかる営業費用を捻出し、残ったものが自身の収入となる。多くの場合、この収入は加盟者とその家族の生活を支える糧となる。
セブンーイレブンのスタッフ(佐久間修志撮影)
 営業費用がかさみ、その結果収入が足りない状況に陥った場合、加盟者はその生活を支えることができない。他方、自身やその配偶者が店舗実務にあたることで人件費が抑えられ、結果自身の収入につなげることができる。多くの加盟者が松本さんのように相当長時間店舗で就労をするのは、自身の収入、そして多くの場合生活の糧を確保するためであると考えられる。

 加盟者の収入を決める要素は複数ある。店舗の売り上げ、人件費をはじめとする営業費用、商品の廃棄量、ロイヤルティーの割合などである。店舗によって売り上げや営業費用はそれぞれ異なるが、多くの加盟者が松本さんのように店舗運営のために長時間就労していることからすると、そのフランチャイズシステム上の大きな構造的要因は、加盟者間に共通する要素であるロイヤルティーの割合に求められる。

 そして今、一つの構造的な原因が、話題になっている24時間営業である。24時間営業するためには深夜も開店していなければならないが、その分スタッフの深夜割増賃金をはじめとする固定費が加盟者に重くのしかかる。他方深夜帯の日中に比べた売り上げは限定的である。

 加盟者にとっては収入につながりにくい一方、専ら自分で負担しなければならない営業費用がかさみ、収入を浸食する。収入と生活の糧を確保するために、深夜帯にシフトに入り、就労する加盟者は多い。いわゆる「ワンオペ」で接客、清掃、商品の検品・陳列を行う加盟者もいる。

 これに加えて、近時は人手不足により加盟者がスタッフを確保できず、この穴を埋めるために就労しなければならないようになっているという指摘もある。人手不足の原因も複数あるが、上記の構造的問題と無関係ではない。フランチャイズ契約上、人件費を一手に負担することとなっており、その多寡が自らの収入、そして多くの場合生活の糧に響いてくるような加盟者は、最低賃金またはそれに近い水準でしかスタッフを雇用することができない場合が多い。加えて、社会保険が完備されていない店舗もある。これでは人は集まりにくい。そしてこれが加盟者の就労時間の伸長に拍車をかける。

 24時間いつでも開いており、欲しいものが欲しいときに手軽に手に入るコンビニの利便性は疑いようもなく、また地域の安全への貢献も指摘されるところである。しかし、このようないわゆる「社会インフラ」としての価値の代償を、加盟者が不相応に払わされているというべきケースが残念ながら、無視することのできない数の店舗で存在する。これを放置したままではいけない。政府が働き方改革を進め、長時間労働を是正することが政策として掲げられている今日ではなおさらである。

 松本さんの問題が広く知られるようになったのと時を同じくして、セブン-イレブンは、直営店舗と加盟店舗とで、時短営業を試行することを発表した。これが全国の松本さんと同じような加盟者の問題を解決する糸口になることを願う。しかしながら、同社は24時間営業の方針を変更したものではないという。
セブンーイレブンの店舗(竹村明 撮影)
 また、長時間就労をもたらす構造的な問題は24時間営業にのみ存在するものではなく、先に述べたようにロイヤルティーの構造やそれがフランチャイザーにより一方的に決められるところにもある。これを機に、24時間営業の是非のみならず、その他の問題になり得る点を洗い出し、コンビニフランチャイズシステム全体の検討がされるべきである。

 そしてその検討を充実させ、真に問題に対処できる答えを導くためには、フランチャイザー主導によるトップダウンの検討ではなく、全国に2万以上あるという店舗の加盟者、スタッフ、利用者など各関係者による対話が必要不可欠であろう。セブン-イレブンは松本さんと今後もしっかり話し合うことを表明しているが、より広く対象を広げ、しっかりと話し合う姿勢を取ることを切に期待したい。

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