しかし、陛下自身も述べてられているように、天皇としての務めとは、人々の傍らに立ち、その声に耳を傾け、思いに寄り添うことも大切なのである。その意味で、被災地訪問は天皇にとって重要な務めと言えよう。

 政府や行政機関側も、天皇、皇后が被災地を訪問することで、物や金銭による救援の遅れや不備に対して、被災者側からの不満が大きく鎮められることを知っている。そのため、政府や行政機関にとっても天皇、皇后の被災地訪問は重要なのである。

 とはいえ、こうした政府や行政機関の救援の遅れや不備の「補填」として、天皇、皇后の被災地訪問が形式化してしまうと、政府や行政機関の救済支援を「糊塗(こと)」するためと誤解され、被災者側からの不満がかえって高まる危険はある。

 次代の天皇、皇后以後も、被災地の現状に無理をかけず、それでいてできるだけ早急に現地に向かい、被災者の心を受け止める心を持って対等に接し、一人一人を励ましていく努力が大切なものとなろう。

 さらには、新天皇は水問題の専門家でもあり、水害を中心とした災害予防や被災対応への科学的な提言、それに基づく具体的なプロジェクト支援などを、政治的発言とならない範囲で期待できるのではないか。また、適応障害で苦労された新皇后も自らの体験を被災者の心に重ねることで、より踏み込んだ被災者への寄り添いがなされるのではないだろうか。

 ただ、懸念されるのは、地球環境の変動に伴い、今後さらなる自然災害が頻発する懸念はぬぐい切れず、被災地訪問を担う天皇、皇后の負担が増えていくことである。天皇、皇后も人間である。肉体的、精神的な限界もあろう。そうした天皇、皇后の負担への配慮は、政府や行政、そして私たち国民一人一人に求められるべきことなのかもしれない。
2009年9月、和船にお乗りになられた天皇、皇后両陛下と秋篠宮妃紀子さま、悠仁さま=神奈川県葉山町(栗橋隆悦撮影)
2009年9月、和船にお乗りになられた天皇、皇后両陛下と秋篠宮妃紀子さま、悠仁さま=神奈川県葉山町(栗橋隆悦撮影)
 将来、秋篠宮悠仁親王の配偶者はこうした被災地訪問を心から成しえる方が望まれることとなろう。悠仁親王が天皇になるのはまだ40年ほど先かもしれない。

 しかし、女性皇族が適齢期となり、いつでも皇籍を離れることができる現在、男系男子を維持するのであれば、悠仁親王の配偶者問題はそろそろ検討されなければなるまい。男子を産むだけでなく、被災者の心に寄り添って天皇とともに被災者を励ますことができる方となると、その候補者はかなり限られてしまうからだ。