2019年03月12日 10:13 公開

イスラム過激派勢力「イスラム国(IS)」に参加したイギリス人少女の生後3週間の赤ちゃんがシリアの避難所で死亡した問題で、ジェレミー・ハント英外相は10日、赤ちゃん救出に英政府関係者を派遣するのは危険すぎると判断したとBBCに述べた。イギリス人少女シャミマ・ベガムさん(19)は帰国を希望しているが、英内務省は市民権を剥奪(はくだつ)した。

ベガムさんは2015年に15歳でロンドンからシリアに渡り、ISに参加した。オランダ出身のIS戦闘員と結婚し、子供3人を出産した。子供2人はすでに死亡し、夫はベガムさんと別の拘置所で収監されている。

今年2月にシリアの難民キャンプで発見されたベガムさんは、イギリスに帰りたいと訴えているが、内務省は帰国を認めず、市民権を剥奪した。

3週間前に生まれた男の子のジャラちゃんは7日、肺炎のため難民キャンプで死亡したのが確認された。男の子はイギリス国籍を持っていたため、野党などはベガムさんの帰国を認めなかったサジド・ジャヴィド内務相を批判している。

10日朝にBBC番組「アンドリュー・マー・ショウ」に出演したハント外相は、ジャラちゃんが英市民だったことを認めた上で、「母親は自ら選び、自由な国を離れてテロ組織に参加した」と批判。ジャラちゃんをシリアから救出するのは危険すぎて、「あの戦闘地域に送り込む英政府関係者の安全性を考慮」する必要があったと述べた。

ベガムさんのいる避難施設には、BBCのクエンティン・サマヴィル中東特派員をはじめ、複数の報道関係者が到達し、ベガムさんに直接話を聞いている。

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「シャミマはダエシュ(アラビア語でのISの蔑称)に参加すると決めたとき、大使館も領事館の支援もない国に行くのだと分かっていたはずだ。そういう決断には、悲惨なことではあるけれども、それなりの結果が伴う」とハント外相は述べた。

外相によると、他のいわゆる「IS花嫁」が産んだイギリス国籍の子供たちを発見・救出するため、外務省は方法を検討しているという。

最大野党・労働党のダイアン・アボット影の内相は、ジャラちゃんが病死したのは、ベガムさんの市民権剥奪という「冷淡で非人道的」な決定のせいだと、ジャヴィド内務相を批判した。与党・保守党からも、法務省の閣外相を経験したフィリップ・リー下院議員が、政府は自分たちの「道徳的責任」を「反省すべき」だと述べた。

政府報道官は、「どのような場合でも、子供が亡くなるのは悲劇で、家族にとって大きな心痛だ」とコメントした。

ベガムさんのほかにも、2人のイギリス出身の女性が市民権を剥奪され、幼い子供たちとシリアの避難施設にいることが明らかになった。

10日付の英紙サンデー・タイムズによると、ロンドン東部出身の姉妹、リーマ・イクバル(30)さんとザラ・イクバルさん(28)がシリアの難民キャンプにいる。2人は別々のキャンプにおり、8歳未満の男の子が合計5人いるという。姉妹の両親はパキスタン出身だが、姉妹が二重国籍を持っていたかははっきりしない。姉妹は2013年にシリアに渡り、欧米人捕虜の殺害ビデオと「強く関係する」IS戦闘員たちと結婚したという。

消息筋はBBCに対して、姉妹の市民権剥奪の判断は、2018年4月に辞任したアンバー・ラッド前内相によるものだという。

内務省は、個別の案件についてコメントしないが、個人から市民権を剥奪するのは個別の証拠にもとづく、きわめて慎重な判断によるものだと述べた。

英政府は1981年イギリス国籍法にもとづき、内相が「公共の利益にかなう」と判断し、かつ当事者が無国籍にならない場合において、個人の市民権を剥奪することができる。

移民法サイト「Free Movement」によると、内務省が市民権剥奪権限を行使する回数は近年で劇的に増えており、2017年までの10年間では50件だったのに対し、2017年には104人が市民権を喪失しているという。

(英語記事 Shamima Begum: 'Not safe' to rescue IS bride's baby, says Hunt