島田裕巳(宗教学者)

 靖国神社が揺れている。2代続けて宮司が任期途中で退任するという出来事が起こった。しかも、それは病気が理由ではない。これはかつてない事態である。

 天皇自らが神社に参拝することは「親拝(しんぱい)」と呼ばれるが、平成の時代には、一度も親拝が行われなかった。平成が終わる4月の末までに親拝が行われる可能性はゼロに等しい。

 戦没者の慰霊のための天皇親拝が、靖国神社にとって最も重要な事柄である。それが果たされなくなったことは、宮司交代とは比較にならないほど重大事であるはずである。

 首相の靖国神社参拝ということがずっと問題になってきたが、親拝に比較すれば本来それほど重要なことではない。平成の時代に宗教をめぐって起こった重大な、そして深刻な事態は、その著しい衰退である。

 各宗教団体の信者数は、文化庁が毎年刊行している『宗教年鑑』に掲載される。信者数は、あくまでそれぞれの団体が申告した数で「自称」ということになるが、それだけを追っても、宗教の衰退ぶりは激しい。

 神道系の信者は、平成の間に9千万人から8千万人に減った。これは、人口減少が本格化する前の数字である。

 神道系以上に衰退が激しいのは仏教系で、8500万人から4800万人に減少した。3700万人も減ったのである。
日蓮正宗の総本山、大石寺にある日本庭園「法祥園」の桜=静岡県富士宮市(ゲッティイメージズ)
日蓮正宗の総本山、大石寺にある日本庭園「法祥園」の桜=静岡県富士宮市(ゲッティイメージズ)
 ただ、その中には、日蓮系の日蓮正宗の信者が1780万人から69万人に減ったことが含まれる。平成が始まったころ、日蓮正宗と長年密接な関係を持っていた創価学会が破門されるという出来事が起こった。その数を差し引いても、仏教系は2千万人減っている。