片岡亮(ジャーナリスト)

 テクノユニット、電気グルーヴのメンバーで人気俳優のピエール瀧(本名・瀧正則)が、コカイン若干量を使用したとして、麻薬取締法違反(施用)の疑いで関東信越厚生局麻薬取締部に逮捕された。所属事務所は謝罪した上で「この事態を重く受け止め、多大なるご迷惑をおかけしております関係各位の皆様へ対応させていただく所存です。また、本人の処遇につきましては、捜査の進捗(しんちょく)を見守りつつ厳正に対処してまいります」とのコメントを発表した。

 報道によると、尿検査でコカインの陽性反応が出ており、瀧容疑者も取り調べに「間違いありません」と容疑を認めているという。推定無罪の原則から、事務所は本人の処分について「見守る」としているが、既に関係先への損害は発生しているため、罪の有無に関係なく謝罪対応を進めているわけだ。

 その通り、瀧容疑者の逮捕による影響はあまりに大きい。何しろ俳優や声優だけでなく、CMや音楽、ゲーム、アニメ、ラジオ番組など活動の幅が広く、多方面でさまざまな対応が行われた。

 このような事件が起こるたびに議論になるのが、芸能人の逮捕で出演番組の「お蔵入り」や差し替え、映像・音楽作品の撤去や販売自粛は必要か、というものだ。インターネット上では「作品に罪はない」という意見が多く見られる。先ごろ、俳優の新井浩文被告が強制性交の疑いで逮捕された際も、出演作品の自粛や差し替えなどが相次ぎ、同様の議論があったばかりだ。

 タレントの犯罪や不祥事により、対応を迫られる場合を主に三つに分けるならば、「本人の生出演」「収録済みで公開予定の作品」、そして「既に公開されて流通している作品」になる。30周年の記念ツアー中だった電気グルーヴは3月15、16日に予定されていた東京公演の中止を決定した。

 また、木曜パーソナリティーを務めていたTBSラジオ『赤江珠緒たまむすび』は公式サイトから関連部分を削除し、代役などについて「協議中」としている。これらは「本人の生出演」に該当し、逮捕で不在となるのだから出演取りやめは当然だろう。

 出演中のNHK大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』は「収録済みながら公開予定の作品」に該当する。NHKは直ちに公式サイトから瀧容疑者の写真を削除した。放送こそ継続されるが、主人公に大きな影響を与える重要な役どころだけに降板は避けられない。

 瀧容疑者がキリギリスに扮して出演していた住宅設備大手、LIXILのCMも差し替えられ、ユーチューブの公式チャンネルからも動画が全て削除された。ウォルト・ディズニー・ジャパンは、映画『アナと雪の女王』の日本語吹き替え版で瀧容疑者が声優を務めていたキャラクターの降板を発表、11月公開予定の続編も交代する。出身地の静岡市では、瀧容疑者が歌うPRソング「まるちゃんの静岡音頭」に関する自粛対応を決めた。
電気グルーヴの石野卓球(左)とピエール瀧容疑者(2015年12月撮影)
電気グルーヴの石野卓球(左)とピエール瀧容疑者(2015年12月撮影)
 これらは「容疑者」の段階であっても、一様に起用停止の方向を打ち出している。理由は詳しく示されていないが、視聴者から受信料を受け取る立場のNHKや、税金を投入している事業の静岡市、イメージ重視のスポンサー企業など、立場はそれぞれでも「犯罪者の可能性が高くなった人物の作品を提供するのは好ましくない」という判断をしたことが容易に推察できる。視聴者などからクレームが来ることも想定しての対処だと言われれば「それでも起用を続けろ」とは言いにくい。