山岸純(弁護士)

 「タバコ休憩は不公平だ」と話題になることが増えてきたように感じます。しかし、そもそもつい十数年前までのように、自分のデスクでタバコが吸えるなら、誰も何の文句も言わないのではないでしょうか。

 私が司法修習生だった15年ほど前、配属先の法律事務所では、割り当てられたデスクでタバコが吸えましたし(その法律事務所のボスが愛煙家でした)、たまにテレビで見る「あの頃」の画像なんかでも、皆さんデスクでモクモクとタバコを吸っています。
 
 この後、「禁煙ブーム」と「分煙ブーム」が巻き起こり、いつの間にか、タバコ=悪のような図式までもが出来上がっていました。

 まぁ、日本でタバコの製造を独占する企業自ら、「分煙」を大々的にアピールし始めたのですから致し方ありません。

 いずれにせよ、かつては「タバコを吸いながら仕事ができた」以上、「タバコ休憩」という言葉も出てこなかったわけです。

 これに対し、現在は「タバコを吸うためには執務スペースを離れなければならない」ことが原因となり、「タバコ休憩」という言葉が出てきました。

 さて、労働基準法という法律は、第34条第1項において「労働時間が6時間を超える場合においては少なくとも45分、8時間を超える場合においては少なくとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない」と規定しています。

 要するに、ほとんどの企業で採用している「1日8時間」の勤務時間制であれば、1時間は休憩時間をとることができるので、この時間の中で時間を工面してタバコを吸いにいくなら誰も何の文句も言わないことでしょう。

 もっとも、かつてタバコを吸っていた私もそうでしたが、実際は昼休憩の1時間以外にも、「仕事が一段落した際」、「仕事が詰まって考え事をする際」、「ちょっと雑談をする際」、「上司に怒られてふてくされた際」など、さまざまなタイミングに「タバコ休憩」をとっています。

 とすると、昼休憩の1時間にこれらの「タバコ休憩」を合わせれば、喫煙する社員にだけ法律によって与えられた1時間という休憩時間をはるかに超えた休憩が与えられていることになってしまいます。
※写真はイメージです(ゲッティイメージズ)
※写真はイメージです(ゲッティイメージズ)
 こうなると、当然のことながら、本来、その喫煙する社員に割り振られている業務が滞ってしまいます。

 さらに、会社というものは、複数の社員と会社の財産(原材料、製造プラント、商品、営業情報など)が有機的に結合されて利益を生み出す社会的存在ですので、喫煙者1人の業務が滞ってしまうと、会社全体の稼働力もおのずと低下してしまうわけです。

 したがって、会社全体の業務効率・稼働力の維持という観点からは、「タバコ休憩」を「悪」と決め付け、禁止することも許容されると考えることもできます。

 とはいえ、一律に「タバコ休憩」を禁止してしまう、というのもやや問題が残ります。

 例えば、勤務中のスマホ閲覧や、勤務中の私用メールも、業務中に業務外の私的な行動をするという意味では「休憩」みたいなものですが、このような行為を禁止していることを理由に、会社は社員を懲戒処分にできるでしょうか。