2019年03月20日 14:57 公開

イギリスのテリーザ・メイ首相は、正式に欧州連合(EU)にブレグジット(イギリスのEU離脱)延期を求める書簡を送る方針を固めた。

BBCが取材した内閣関係筋によると、延期期間は最長で2年になる可能性もあるが、首相官邸はまだ決定していないと話している。

一方でEUのミシェル・バルニエ首席交渉官は、イギリスからこの延期期間中に関する「確固たる計画」が出ない限り、EU側は延期に応じないとしている。

BBCのローラ・クンスバーグ政治編集長は関係者の話として、延期についての閣議では「何も合意しなかった」と伝えている。

また、メイ首相が短期と長期、どちらの延期について議論しているのかを明確にしなかったため、いら立つ閣僚もいたという。

保守党のアンドレア・レッドソム下院院内総務は、内閣が「ブレグジット内閣」ではなく「EU残留内閣」になってしまっていると批判したと報じられている。

フィリップ・ハモンド財務相は、閣僚はみな「できるだけ短い延期」を望んでいるものの、「それぞれが違う手法でそれを達成すべきだとしている」と話した。

離脱延期にはEU全27カ国の合意を得る必要がある。メイ首相は21日にブリュッセルで開かれるEU首脳会談に出席し、条件について協議する予定だ。

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このままなら3月29日離脱

イギリスの現行法がこのまま変わらなければ、EU側との合意の有無にかかわらず、イギリスは3月29日にEUを離脱する。

首相はなお、EUとまとめた離脱協定の下院採決にこぎつけられる可能性があるとみている。しかし、もし協定が承認されたとしても、関連法案を議会にかける時間が必要なため、EUに短期間の延期を要請する必要があると述べた。

内閣関係筋の話では、メイ首相はEUに対し6月30日までの延長を求める方針だが、さらなる延長を可能とする条件を付けるという。

英下院(定数650)は12日、テリーザ・メイ首相が欧州連合(EU)と取りまとめた離脱協定を149票差で否決した。13日にはEUとの合意のないまま離脱するいわゆる「合意なしブレグジット」も否決。翌14日には、EUにEU基本条約(リスボン条約)第50条に定められている離脱交渉期間の延長を求めることを決めた。

メイ首相は離脱派の保守党議員に対し、議会で協定が承認されなければ延長はより長いものになると警告している。

その上で今週中に協定を3度目の採決にかけようとしていたが、ジョン・バーコウ下院議長が18日、協定に変更点がない場合は採決を認められないとの決定を下した。


ブレグジットの現状

  • メイ首相はEUにあてて、第50条の延長を書簡で要請する予定
  • 21日にはブリュッセルで開かれるEUサミットに出席し、延期条件について協議する
  • 離脱延期にはEU全27カ国の合意を得る必要がある
  • 延期が認められれば、メイ首相は議会で3度目の協定採決を試みるとみられる
  • イギリスの下院も、延期について投票する機会がある
  • これまで協定に反対票を投じてきた保守党の離脱派議員および閣外協力している北アイルランドの民主統一党(DUP)との協議も続いている
  • メイ政権は来週にも協定に対する「意味ある投票」を求める可能性がある
  • しかしバーコウ下院議長は、前回と全く同じ協定の採決は認めないとしている
  • イギリスは法的には3月29日にEUを離脱する予定だが、協定が承認されない場合は合意なしブレグジットとなる

1604年の慣習をもとに

バーコウ議長は18日、1604年に制定された、一度否決された動議は同じ会期内に再度採決にかけることはできないという慣習を引用。議員が12日に否決した協定と「実質的に同じ」ものを、3度目の「意味ある投票」にかけることはできないとした。

BBCの取材に対しバーコウ議長は、この決定の理由について説明しなかった。

スティーヴン・バークリーEU離脱相は、メイ首相がEUから離脱延期を取り付けた場合、来週にも3度目の協定採決を行う可能性があると示唆した。

バーコウ議長の決定についてバークリー氏は、「審判を尊重する」のは大事なことで決定に従うと述べた一方、バーコウ議長も過去に、議会が前例に従ってばかりいては「何も変わらない」と発言していたと釘を刺した。

バークリー氏はまた、政府がDUPの議員10人を含む、協定を可決するに十分な数の議員を説得できれば、3度目の採決への「道が見つかる」かもしれないと話した。

EUは新展開を要求

EUのバルニエ首席交渉官はブリュッセルで記者会見し、離脱延期の是非は、27カ国の首脳がEUに「最も利益がある」状態を基準に決めると述べた。

しかし長期に及ぶ延期には、「今の状態に逆戻りしない」よう「新展開」や「新しい政治的プロセス」が必要になると釘を刺した。

「明確な計画なしにこの不透明な状況を延長すれば、我々の作業の経済的負担が増えるだけでなく、EUにとって政治的負担となる」とバルニエ氏は指摘し、「イギリスが次に何をしたいのか、政府と議会は一刻も早く決める必要がある」と強調した。

バルニエ氏はさらに、イギリスの下院議員が「合意なしブレグジット」を否決してもそれを完全に阻止できるわけではないと述べ、「今こそ全員が合意なしブレグジットへの準部を全て完了させるべきだ」と話した。

BBCのカティヤ・アドラー欧州編集長は、EUはメイ首相を「ほとんど信用しておらず」、加盟国首脳の一部からは、EUが離脱延期を認める前にイギリスの議員がそれを承認する確約が欲しいとの声も挙がっていると指摘した。

またEUには、イギリス議会が「国内しか見ていない」ようで、離脱延期によるEUへの負担が考慮されていないことへの「いら立ち」があると話した。

EUは28日に緊急の首脳会談を開く可能性もあり、EUの離脱延期に関する最終判断は今週中に出ないかもしれないとアドラー編集長はみている。

ドイツのアンゲラ・メルケル首相は先に、ドイツとイギリス、そしてEUの利益がかかっているため、最後まで「整然としたブレグジット」実現のために努力すると話している。

また、アイルランドのリオ・バラッカー首相と欧州理事会のドナルド・トゥスク常任議長(大統領に相当)は、ダブリンでの会談後の共同声明で、「21日にブリュッセルで行われる欧州理事会の前に、イギリス政府からどのような提案が出てくるかを見守らなくてはならないことで合意した」と発表した。

野党の反応は?

最大野党・労働党のジェレミー・コービン党首は、バーコウ議長の介入は「議会が確実に尊重されるようにするためのもの」だと評価した。

また、EUとの将来の関係について保守党や労働党の議員と協議したことを明らかにし、メイ首相の協定よりも、EUとの間に緊密な関係を求めるいわゆる「ノルウェー・プラス型」は「面白いアイデア」だと話した。ただし、「全面支持」はしないという。

2度目の国民投票については、「ブレグジットの問題は、議会が何らかの決定を下した後に国民の前に示されるべきだ」と述べた。

その上で、国民投票は選択肢の中に含まれるべきで、「ブレグジットは単なるメイ首相の協定か、残留かというものではない。国民のための選択肢も必要だ」としている。

労働党の報道官によると、コービン党首はスコットランド国民党(SNP)、自由民主党、プライド・カムリ(ウェールズ党)、緑の党などの野党幹部と、EUとより緊密な関係を求める提案について協力する可能性について「建設的な」協議を行った。

(英語記事 May to ask EU for Brexit date delay