また、アメリカ・ファーストの柱である保護貿易主義では、これまで「米国にモノを売りつけてきた国」が厳しい批判の対象となっているが、一方で「米国のモノを買う国」が必要となる。現在、事実上の「敵対関係」にある中国を除けば、最も米国のモノを買える国は日本であることは明らかだ。その意味で、トランプ氏は少なくとも現時点では、日本のことを悪く言うことはないのだ。

 日露関係はどうだろうか。安倍首相とプーチン氏の日露首脳会談は通算25回になる。安倍首相は「私とウラジーミルの間で、北方領土問題を解決し、日露平和友好条約を締結する」とぶち上げたが、実際には進展が見られない。

 なにせ安倍首相が再三「ウラジーミル」と呼びかけても、プーチン氏は「安倍首相」と返し、決して「シンゾー」とファーストネームで呼んでくれない。それはともかくとしても、プーチン氏が「両国の間にはまず信頼関係の構築が必要だ」と言い、ロシアの求めに応じて経済協力だけが進んでいる。それは、2014年のロシアによるウクライナ南部クリミア半島の併合に端を発した、米国やEUなどの「対露経済制裁」に、日本が足並みを揃えずに進められている協力だということが重要だ。

 日露交渉において、北方領土問題を日本側が持ち出すと、ロシアのラブロフ外相が「第2次世界大戦の結果を認めていないのは日本だけだ」と激しく非難するなど、ロシア側の強硬な態度が目立ち、交渉難航が伝えられる一方で、経済協力ではロシアだけが着々と利益を得ている状況にみえる。だが「そもそも論」だが、なぜ日本がロシアに対して「下手」に出る必要があるのだろうか。

 ロシアは「大国」のイメージを高めているが、それは「幻想」にすぎない。1991年のソ連崩壊以降のロシアは、英米やEUによる旧ソ連圏や東欧諸国の「民主化」の画策によって、影響圏をドイツの東ベルリンからウクライナまで後退させた。

 東欧諸国の多くがEUや北大西洋条約機構(NATO)軍に加盟し、ついにウクライナがそれに加わる可能性が出てきていた。20年間にわたり、ロシアは負け続けていたのである。「クリミア半島併合」は防戦一方の中で、辛うじて繰り出した「ジャブ」のようなものにすぎない。

 また、ソ連崩壊後、ロシアは幾度となく経済危機に見舞われてきた。かつて高い技術力を誇った宇宙産業や軍需産業、原子力産業などは見る影もない。過度に石油・天然ガスの輸出に依存する経済で、その価格下落が経済危機に直結する脆弱(ぜいじゃく)な構造だ。
2018年11月、会談を前にロシアのプーチン大統領(右)と握手する安倍首相(共同)
2018年11月、会談を前にロシアのプーチン大統領(右)と握手する安倍首相(共同)
 「シェールガス・オイル革命」によって世界一の産油・産ガス国になった米国の攻勢で、石油・天然ガス価格は不安定だ。プーチン政権にとって、「脱石油・天然ガス依存」は急務であり、製造業を育成するために日本の支援を切実に望んでいるのだ。

 さらに言えば、急拡大してきた中国との関係も微妙だ。ロシアと中国は、極東の天然ガスパイプラインの建設プロジェクトで合意するなど良好な関係にあるとされる。