しかし、ロシアはシベリア・極東地域の開発を中国だけとやりたくはない。アフリカなどへの進出でも分かるように、中国は海外に進出する際、政府高官や建設業者、労働者から家政婦まで乗り込んで、「チャイナタウン」を作ってしまう。現地にカネが落ちず、雇用も増えないと不満が高まることも多い。

 要は、元々人口が少ないシベリア・極東地域を中国と一緒に開発すると、「人海戦術」で中国に実効支配されることを、ロシアが恐れている。だから、日本にも参加してもらいたいのだ。

 日露協力は、「経済的」にはロシアが切実に望むものであるが、日本側は進展しなくても別に困らない。もちろん「政治的」には北方領土問題があり、安倍首相は「戦後70年以上動かせなかった問題を、自分たちの時代で解決する」と意気込んでいる。

 だが、この意気込みを裏返せば、「70年動かなくても、大きな問題とならなかった」ともいえる。なぜ、これだけ日本が有利な状況にある交渉で、「北方四島のうち、2島だけでも先に返してもらえないか」と下手に出て、ロシアの言うままに経済協力を進めないといけないのか、理解できない。

 要するに、安倍首相が世界の強烈な個性を持つ首脳たちと何度もサシで話し合い、笑顔で握手する映像を流し、記者会見で長時間成果を語っているが、相手に何を話しているかわからない。繰り返すが、かつて「空気を読めない男」と呼ばれ、現在でも国会で野党に対してすぐ感情的になる政治家が、日本の主張を強く、論理的に訴えて、説得できるのであろうか。

 むしろ、「安倍外交」がおおむね適切だったのは、アメリカ・ファーストのトランプ氏をはじめ、プーチン氏や習氏ら権威主義的な指導者が跋扈する国際社会で、あまり積極的に動かず、日本の公的な主張を棒読みしながら、笑顔で相手の主張にもうなずき続けて機嫌を損ねないという、無理のない対応に終始してきたからではないだろうか。

 しかし、今後も安倍首相が、無理のない、おおむね適切な外交を続けられるかどうかはわからない。アメリカ・ファーストを掲げたトランプ氏は「北朝鮮の核・ミサイル開発への介入」「エルサレムのイスラエル首都承認」「米国のイラン核合意離脱」「ロシアのサイバー攻撃への制裁」「米中貿易戦争」と世界を振り回し続けた。安倍首相はトランプ氏に徹底的に従う姿勢で「いい奴」と思われてきたが、今後もそれでいいのだろうか。
2017年11月、北朝鮮による拉致被害者家族らと面会後、感想を語るトランプ米大統領(前列右から3人目)。同4人目は安倍晋三首相(代表撮影)
2017年11月、北朝鮮による拉致被害者家族らと面会後、感想を語るトランプ米大統領(前列右から3人目)。同4人目は安倍晋三首相(代表撮影)
 そもそも、安倍首相自身に焦りが見られるように思う。例えば、「北朝鮮問題」は、トランプ大統領とサシで話し続けていても、「拉致問題」に動く気配がなく、「北朝鮮の完全な非核化」にしても、大統領が本気で取り組んでいるのかよくわからない。

 2度目の米朝首脳会談こそ物別れに終わったが、韓国やロシア、中国などが隠れて経済協力を始めておかしくない。日本に向けて中距離核ミサイルがズラッと並んだまま、日本が「蚊帳の外」になりかねない状況だ。