2019年03月25日 14:10 公開

2016年米大統領選におけるロシア介入とトランプ陣営による結託の疑惑、ドナルド・トランプ大統領による司法妨害の疑惑などを調べていたロバート・ムラー特別検察官の捜査報告書について、ウィリアム・バー司法長官は24日、トランプ氏やトランプ陣営がロシアと共謀した証拠はないと連邦議会に報告した。司法妨害については判断を示していない。民主党は、ムラー報告書の全文提出を求めている。

バー司法長官が上下両院司法委員会の委員長および筆頭委員に宛てた手紙の全文(英文)はこちら。ここでは全文を和訳した――。


拝啓 

グレアム委員長、ナドラー委員長、ファインスタイン筆頭委員、コリンズ筆頭委員、

2019年3月22日(金曜日)に提出した通知への補足として、ロバート・S・ムラー3世特別検察官が到達した主要な結論について、そして検察官が用意した報告書を受け取り私がまず点検した結果、今どのような状況になっているかお知らせするため、この手紙を書いています。

特別検察官の報告書

特別検察官は金曜日、「起訴もしくは不起訴の判断について説明する、非公開の報告書」を、連邦規則集28編第600.8条c項にもとづき提出しました。この報告書は「2016年大統領選挙へのロシア介入に対する捜査に関する報告」と題されています。私は今も内容を点検中ですが、報告書を説明し、特別検察官が達した主な結論と捜査の結果を要約することは、国民の利益にかなうことだと考えます。

報告書では、2016年米大統領選挙に介入しようとするロシア政府と、ドナルド・J・トランプの大統領選対策本部とその関係者が共謀した、もしくは関連する連邦捜査を妨害しようとしたという疑いについて、特別検察官とスタッフが徹底的に捜査したことが書かれています。報告書で特別検察官は、捜査を完遂するにあたり、弁護士19人を雇い、約40人の連邦捜査局(FBI)捜査官、インテリジェンス分析官、法廷会計業務の専門家、その他の分野の専門スタッフからなるチームの補佐を受けたと説明しています。特別検察官は2800本の召喚令状を発し、約500本の捜索令状を執行し、通信記録押収の裁判所命令を230件以上獲得し、通話相手の記録機の使用を50回以上許可し、外国政府に13回証拠提出を要請し、約500人の証人を事情聴取しました。

特別検察官は捜査に関連し、個人・法人に対する複数の正式起訴と有罪判決を獲得し、いずれも内容を公表しています。捜査の過程で特別検察官はいくつかの案件について、他の事務所に対応の継続を委託しています。報告書は、追加の起訴を勧告せず、特別検察官が未公表で非公開の起訴状を取得した事実もありません。特別検察官報告書の主要な結論を、下記で要約します。

2016年米大統領選へのロシア介入

特別検察官の報告書は2部に分かれています。第1部は、2016年米大統領選挙へのロシア介入について捜査結果を説明したものです。ロシアがどのように選挙結果に影響を与えようとしたか概要を示し、それに関連してロシア政府につながりのある人物たちがどのような犯罪を犯したかを記録しています。報告書はさらに、トランプ陣営に関わる人物を含むアメリカ人が連邦法に違反し、大統領選を左右しようとするロシアの謀略に参加したのかどうかについて、特別検察官が何より注目していたと説明しています。特別検察官の捜査は、トランプ選対およびそれに関係する何者かが、2016年米大統領選を左右しようとするロシアと共謀もしくは連携したという事実を見つけませんでした。報告書には「捜査は、トランプ陣営の関係者が、ロシアの選挙介入活動と共謀もしくは連携したという事実を、確定しなかった」と書かれています。

特別検察官の捜査の結果、ロシアは主に2つの形で2016年選挙を左右しようとしたと確認されました。まずひとつは、ロシアの組織「インターネット・リサーチ・エージェンシー(IRA)」を通じて、究極的には選挙介入を目的に、アメリカ社会に不和をもたらすため、情報かく乱とソーシャルメディア活動を展開したこと。上記のように特別検察官は、いかなるアメリカ人についても、そしてトランプ陣営幹部や関係者についても、IRAの取り組みに共謀したり意図的に連携した事実を見つけませんでした。ただし特別検察官は、こうした活動に関連して複数のロシア国民や組織を起訴しています。

もうひとつ、ロシア政府は選挙を左右する目的で情報を収集し拡散するため、コンピューター・ハッキング作戦を展開しようとしました。特別検察官は、ロシア政府の工作員がクリントン陣営や民主党組織の関係者のコンピューター侵入に成功し、メールを取得し、そうして得た内容をウィキリークスを含む様々な仲介者を通じて世間に拡散したことを、捜査によって発見しました。こうした活動をもとに、特別検察官は複数のロシア軍将校を、選挙を左右する目的でアメリカのコンピューターに侵入しようと共謀した罪で起訴しました。しかし、上述したように特別検察官は、複数のロシア関係者がトランプ陣営に支援を繰り返し申し出たにも関わらず、トランプ陣営やその関係者が、こうした活動でロシア政府と共謀もしくは連携したという事実を見つけませんでした。

1) 共謀罪での起訴に相当するか判断するにあたり、特別検察官はトランプ陣営関係者がロシアの選挙介入活動と「連携」したかについても検討した。特別検察官は「連携」を、「選挙介入についてロシア政府とトランプ陣営の間の、暗黙のもしくは明示的な、合意」を意味するものと定義している。

司法妨害

報告書の第2部は、大統領による複数の行動についてです。行動のほとんどは一般に報道されたもので、特別検察官は司法妨害が懸念され得るとして、捜査の対象にしました。「事実関係を徹底的に捜査」した結果、特別検察官は起訴・不起訴に関する司法省基準に則り、その行動を判断するか検討したものの、最終的には従来の起訴・不起訴の判断をしないことにしました。つまり特別検察官は、精査した行動が司法妨害にあたるかどうか、どちらとも結論を下しませんでした。代わりに、捜査した個別の行動について、報告書は問題の両側から証拠を提示し、大統領の行動と意図を司法妨害とみなすことができるかという、特別検察官が法と事実の「困難な問題」だと捉える内容について、結論を出していません。特別検察官は、「この報告書は大統領が犯罪を犯したという結論は出していないものの、無罪を認定するわけではない」と述べています。

特別検察官が司法妨害捜査の事実関係を説明しながら法的判断に至らなかったため、報告書内の行動が犯罪を構成するかどうかを判断するのは司法長官になります。捜査を通じて特別検察官事務所は、一部の司法省関係者と協議し、特別検察官の司法妨害捜査にまつわる多くの法的内容および事実関係について話し合いました。こうした事案に対する特別検察官の最終報告を検討し、法律顧問局を含む省内関係者と協議し、我々の訴追判断の指針となる連邦政府による起訴の原則を適用し、ロッド・ローゼンスタイン司法副長官と私は、特別検察官の捜査で得られた証拠は、大統領が司法妨害の罪を犯したと断定するには不十分だと結論しました。我々の判断は、現職大統領を正式起訴し刑事罰を追及することに関する憲法上の議論とは無関係で、それをもとにしたものではありません。

この決定をするにあたり我々は、特別検察官が、「ロシアの選挙介入に関する大本の犯罪に大統領が関わっていたと裏づける証拠はない」と判断していることに留意しました。さらに、決定的ではないものの、こうした証拠の不在は、司法妨害に関する大統領の意図にも影響すると判断しました。一般論として、司法妨害罪で確定的な有罪判決を得るためには、政府はある人物が悪意をもって、予定もしくは検討している展開に十分関連し得る妨害的行動をとったと、合理的疑いの余地がないほど、立証しなくてはなりません。報告書は、そのほとんどが国民の目の前で行われた大統領の行動を列挙していますが、そのいずれについても、司法妨害的で、予定もしくは検討している展開に十分関連し得るもので、悪意による行動だったと、我々が判断できるものではありませんでした。そしていずれも、連邦法にもとづく司法省の起訴指針にもとづき、司法妨害罪を構成すると、合理的疑いの余地がないほど立証しなくてはありません。

司法省の検討状況

特別検察官の報告書は司法長官への「非公開報告書」になると、関連規則は定めています(連邦官報37,038, 37,040-41(1999年7月9日)、特別検察官事務所細則参照)。しかし私は従前の発言のとおり、本件に対する国民の関心は認識しています。そのため、私は関連法や規則や司法省方針に沿った形で出来る限り、特別検察官の報告書を公表したいと考えています。

特別検察官との協議、および私の当初の検討の結果、報告書には「大陪審が審理する事案」に関連する情報の使用および公開を規制する、連邦刑事訴訟規則第6条e項の対照になり得るのは明らかです(連邦刑事訴訟規則6(e)(2)(B))。この規則は一般的に、刑事捜査と起訴に関する大陪審情報の公開を制限するものです(同)。規則が定める厳格な制限を超えて第6条e項の対象内容を公表するのは、場合によっては犯罪になりえます(参照例・合衆国法典18編)。

合衆国法典18編第401条3項は、大陪審審理の公正性を守り、大陪審の特有で貴重な捜査権限が本来意図される刑事司法機能のためにのみ行使されることを保証しています。

こうした制限をかんがみると、報告書の点検スケジュールは、法的に公表できない6条e項対象の内容を、司法省がいかに速やかに特定できるかに寄ります。私は、報告書内の6条e項情報をできるだけ速やかに特定するため、特別検察官の支援を要請しました。さらにこれとは別に私は、特別検察官が他の捜査当局に委託した継続案件に影響し得る情報を、特定しなくてはなりません。この作業が終わり次第、私は該当する法律や規則や司法省方針に照らして、何を公表できるか速やかに判断できるようになります。

冒頭で書いたように、特別検察官規則によると、「司法長官は議会各委員会への通知の公表」が国民の利益にかなうと判断することができるとあります(連邦規則集28編第600.8条c項)。私はそのように判断しましたので、各位に送付した後、この手紙を公表いたします。

敬具

ウィリアム・P・バー

司法長官

(英語記事 Mueller report: Read William Barr's summary sent to Congress