少しだけ民主党政権のことを弁護すると、2008年にはリーマンショックが起こり、2011年には東日本大震災と原発事故があり、日本経済は、誰が政権にいても大変な状況だった。また、安倍首相は、政権交代した2012年12月以降、戦後最長の景気回復と胸を張るが、いみじくも、そのスタートが12年12月であるように、それは民主党政権時代から「芽」が出ていたとも言えるのだ。突然、政権が代わったから景気が上向くことなどない。その流れを、安倍政権が「異次元金融緩和」で加速したという分析もできよう。

 誤解なきように繰り返し申し上げるが、私は、こんな議論を「どや顔」でやっているのではない。どの政権にも「光と陰」というものがある。私がお仕えした橋本龍太郎政権もそうだ。どの政権も、時々の国際・国内情勢、諸条件を所与の前提として、善政もあれば失政もある。そこに思いをいたして、反省すべきことは反省し、それを将来につなげていくことこそ政治家の使命だろう。

 しかし、「悪夢のような民主党政権」という発言が、自民党大会という身内を鼓舞する舞台でのものだったとはいえ、トップリーダーたる首相は、そこをあえてのみ込んで、もう少し「言い方」があるのではないかということだ。少なくとも私が知る故橋本龍太郎元首相なら、そんな言葉は発しなかった。

 さあ、ここからが私の本論だが、「悪夢」と言うなら、私は「アベノミクスの行く末」と「異次元金融緩和の出口」の方が、はるかに悪夢だと思う。

 ご承知のように、長期化する「異次元金融緩和」で、今や、日銀の保有する国債残高は473兆円(19年2月)、数年前の国内総生産(GDP)並みに膨れ上がった。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)と日銀が保有する株式も66・5兆円(18年6月)。これは東証一部上場会社の時価総額の約1割にあたり、その3社に1社の筆頭株主は「公的資金」と言われている。
20カ国・地域(G20)財務大臣・中央銀行総裁代理会議であいさつする麻生太郎副総理兼財務相(右)。左は日銀の黒田東彦総裁=2019年1月17日、東京都文京区のホテル椿山荘東京(酒巻俊介撮影)
20カ国・地域(G20)財務大臣・中央銀行総裁代理会議であいさつする麻生太郎副総理兼財務相(右)。左は日銀の黒田東彦総裁=2019年1月17日、東京都文京区のホテル椿山荘東京(酒巻俊介撮影)
 こうした「官製相場」となっている債権や株式市場に一体「出口」はあるのか。未来永劫(えいごう)、こうした金融政策が続けられないことは分かっているのだから、それが「ステルス・テーパリング (密かな量的金融緩和の縮小)」であろうがなかろうが、どこかで「手じまい」をしなければならない。そして、その「出口」で、ソフトランディングはできるのか、それとも、ハードランディングになってしまうのか…。

 私は、今の日本経済の、一見良さそうに見える各種指標が、こうした「砂上の楼閣」の上に立っていることを強く危惧せざるを得ない。ひとたび、その「楼閣」が崩れれば、過去の「世界恐慌」の例が教えるように、経済は底を打つまで反転しないのではないか。私は今、そうした「悪夢」に苛(さいな)まれている。ひとたび、こうしたクラッシュが起これば、もはや、今の日本に尽くすべき財政・金融政策の手立てはない。