2019年03月28日 7:38 公開

イギリスの欧州連合(EU)からの離脱をめぐり紛糾する英下院(定数650)は27日、ブレグジット(イギリスのEU離脱)の期限を延長するための法的手続きを可決した。下院はさらに、テリーザ・メイ英首相がEUとまとめた離脱協定に代わる議員提出案8案について、「示唆的投票」を行ったが、2度目の国民投票案を含むいずれの案も否決された。メイ首相は、離脱協定を可決すれば首相を辞任する用意があると与党・保守党の下院議員に伝えた。

下院は27日、イギリスは今年3月29日にEUを離脱すると定めていた法律の改正を可能にする行政委任立法を賛成441、反対105で可決した。これによって、ブレグジット(イギリスのEU離脱)の期限はEU首脳会議の決定に伴い、メイ政権がEUとまとめた離脱協定を下院が承認すれば5月22日に、協定を下院が承認しなければ4月12日に延長される。

下院はさらに同日深夜、すでに2度にわたり否決してきた首相のブレグジット協定に代わる議員案8案に対する「示唆的投票」を行った。このうち、「離脱案について国民の確認を得る」ための国民投票を実施するという案は賛成268、反対295で否決された。このほか、関税同盟には残る案や、単一市場にとどまる案、ブレグジットを中止する案などもすべて否決された。

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2度目の国民投票案は、最大野党・労働党のデイム・マーガレット・ベケット議員が提出したもので、268票と最多の賛成票を得た。

これについて野党・スコットランド国民党(SNP)のイアン・ブラックフォード議員は、首相の離脱協定への賛成票よりも多いので「総選挙を実施し英国民の声を聞くしかない」と話した。

一方、政府のスティーヴン・バークリーEU離脱相は、議員案がいずれも否決されたという結果は「単純な前進方法はない」という証だと述べ、首相がEUとまとめた離脱協定が「一番良い選択肢」だと強調。もし下院がこの離脱協定を支持しないなら、ブレグジットの手続きがいったいどうやって終わるのか「何の保証もない」と釘を刺した。

メイ政権は、当初の離脱期限だった29日夜までに、離脱協定を3度目の下院採決にかける見通し。これについては、これまで協定に強硬に反対していた保守党の離脱派議員たちが支持に回りつつあるという見方もある。

議会の妥協点を探る投票

前例のない示唆的投票の手続きをまとめた保守党のサー・オリヴァー・レトウィン議員は、どの案も過半数を得られなかったのは「残念だ」と述べたが、ベケット議員は、「示唆的投票」の目標は現時点でひとつの案をまとめることではなく、議会の妥協点を探ることだと述べ、それは「千の花が花開くようにすることだ」と話した。

強硬な離脱派のマーク・フランソワ議員(保守党)は、議員たちが「議事進行の決定権を奪取しようとした」この試みは失敗し、国民は下院の様子を「呆れて眺めている」はずだと批判した。

この「示唆的投票」には政府への拘束力はないが、どのような案が下院の支持を受けやすいのかを探るものとして実施されることになった。審議は4月1日にも継続する見通し。


27日に審議され議員提出のブレグジット8

  • 関税同盟:EU離脱後、イギリスはただちにEUとの新しい関税同盟について交渉を始めるというもの――賛成264 反対272
  • 確認のための(2度目の国民投票:議会を通過した離脱協定に対し、批准の前に国民に是非を問う案――賛成268反対295
  • 4月12日に合意なし離脱――賛成160 反対400
  • 単一市場2.0:欧州自由貿易協定(EFTA)に再加入し、欧州経済領域(EEA)にとどまることで、ブレグジット後も単一市場にとどまる案。北アイルランドについては、バックストップに代わる「包括的関税パートナーシップ」が交わされる。また、条件付きで人の自由な移動を認める――賛成188 反対283
  • EFTAおよびEEAへの加入:EFTAに再加入し、EEAの既存ルールには従うものの、施行にはイギリスの裁判所の承認を必要とする案。北アイルランドについてはEUとの関税同盟関係にはならず、代わりとなる合意を模索する――賛成65反対377
  • ブレグジット中止:EU基本条約(リスボン条約)第50条を破棄し、EUから離脱しない選択肢。条件として、政府が協定への支持を取り付けられなかった場合、議会は離脱日の2日前に合意なしブレグジットについて採決する。この採決で合意なしブレグジットが否決された場合に限り、ブレグジットを中止するというもの――賛成184 反対293
  • モルトハウス妥協案A:メイ首相の離脱協定からバックストップを除外し、代わりの合意を加える案――賛成139 反対422
  • 労働党案:単一市場との「緊密な連携」や労働者の権利保護などを含む――賛成237反対307

メイ首相は「示唆的投票」に先立ち、保守党議員に対し「この国とこの党にとって正しいことを行うため、思っていたよりも早くこの職を辞する用意がある」と伝えた。

首相は、次段階のブレグジット交渉の先頭に自分が立つのを大半の保守党議員が望んでいないことは承知していると述べ、「その邪魔をするつもりはない」と述べた。

しかし、首相と閣外協力する北アイルランドの民主統一党(DUP、10議席)は、求めている修正が今も加えられていないため、離脱協定を支持するつもりはないと表明した。

BBCのローラ・クンスバーグ政治編集長は、DUPがこの時点でも離脱協定を支持しないのは、首相官邸にとって「大打撃だ」と話している。

(英語記事 Brexit: No majority for any options after MPs' votesBrexit / :Theresa May vows to stand down if deal is passed