2019年03月28日 12:21 公開

英下院(定数650)は27日夜、テリーザ・メイ首相の欧州連合(EU)離脱協定に代わる議員提出8案に対する「示唆的投票」を行ったが、いずれの案も過半数を得られず否決された。

この日は、ブレグジット(イギリスのEU離脱)審議の主導権を議会が握るという異例の日だった。提出案は2度目の国民投票から4月12日の合意なしブレグジットまでさまざまだった。

一方メイ首相は、自分がEUとまとめた離脱協定を可決すれば首相職を辞任する用意があると明らかにしている。この協定はこれまでに2度、否決されている。

<関連記事>

「示唆的投票」とは?

ブレグジットのこう着状態が続く中、下院議員は数時間にわたる審議の後、どのブレグジット案を支持するかを決める「示唆的投票」を行った。

英下院では通常、議員が賛成ロビーと反対ロビーのどちらかに入室することで投票が記録されるが、今回は印刷済みの投票用紙に賛否を記す方法で行われた。

その後、ジョン・バーコウ下院議長が発表した投票結果は以下の通り。

  • 4月12日に合意なし離脱――賛成160 反対400
  • ブレグジット中止:EU基本条約(リスボン条約)第50条を破棄し、EUから離脱しない選択肢。条件として、政府が協定への支持を取り付けられなかった場合、議会は離脱日の2日前に合意なしブレグジットについて採決する。この採決で合意なしブレグジットが否決された場合に限り、ブレグジットを中止するというもの――賛成184 反対293
  • 確認のための(2度目の)国民投票:議会を通過した離脱協定に対し、批准の前に国民に是非を問う案――賛成268反対295
  • 関税同盟:EU離脱後、イギリスはただちにEUとの新しい関税同盟について交渉を始めるというもの――賛成264 反対272
  • 単一市場2.0:欧州自由貿易協定(EFTA)に再加入し、欧州経済領域(EEA)にとどまることで、ブレグジット後も単一市場にとどまる案。北アイルランドについては、バックストップに代わる「包括的関税パートナーシップ」が交わされる。また、条件付きで人の自由な移動を認める――賛成188 反対283
  • EFTAおよびEEAへの加入:EFTAに再加入し、EEAの既存ルールには従うものの、施行にはイギリスの裁判所の承認を必要とする案。北アイルランドについてはEUとの関税同盟関係にはならず、代わりとなる合意を模索する――賛成65反対377
  • 労働党案:単一市場との「緊密な連携」や労働者の権利保護などを含む――賛成237反対307
  • モルトハウス妥協案A:メイ首相の離脱協定からバックストップを除外し、代わりの合意を加える案――賛成139 反対422

今回の投票で保守党議員は、棄権した主要閣僚以外は党議拘束を受けず、自由に投票が許された。

一方、最大野党・労働党は議員に、2度目の国民投票など党幹部が支持する案に賛成票を入れるよう指示した。

示唆的投票には、政府に対する拘束力はない。仮にいずれかの案が過半数の支持を集めたとしても、メイ首相と政府はそれに従う必要はない。

しかしメイ首相は、EUと取りまとめた離脱協定が2度にわたって否決されたことで窮地に立たされている。

首相はこの日、保守党の下院議員に対し、3度目の採決で離脱協定が承認されれば、首相を辞任する意向を伝えた。

なぜ示唆的投票を

英下院は25日夜、こう着状態を打破するために、EU離脱をめぐる27日の審議の主導権を政府から下院に移すという異例の修正案を329対302の僅差で可決した。

イギリスは3月29日にEUを離脱する予定だったが、下院は今月の審議でメイ首相の協定を否決したあと、合意なしブレグジットも否決した。その結果、メイ首相はEUに第50条で定められた離脱交渉期間の延長を申し出た。

EU首脳会議は21日、合意なしブレグジットは混乱を招くとして延長を承認し、2つの日程を示した。

  • 5月22日:3度目の採決で下院が離脱協定を承認した場合
  • 4月12日:下院が離脱協定を否決した場合。イギリスはこの日までに、延長の追加を求めるか、合意なしで離脱するかを決める必要がある

ただし、4月12日に延長の追加を決めた場合、イギリスは5月23日の欧州議会選挙に参加することになる。メイ首相はこれを望んでいないと述べている。

こうした流れを受けて英下院は27日、3月29日に離脱すると定めていた法律の改正を賛成441、反対105で可決した。

今後の展開は?

いい質問だ。

メイ首相は、当初の離脱期限だった29日夜までに離脱協定を3度目の下院採決にかける見通し。これについては、これまで強硬に反対していたボリス・ジョンソン前外相など、保守党の離脱派議員たちが支持に回りつつあるという見方もある。

これは、離脱派議員がブレグジットが大幅に遅れたり中止になる可能性を懸念し始めたことに加え、メイ首相が協定が承認されれば辞任するとの意向を示したからだとみられる。

しかしこの希望に水を差しているのが、北アイルランドの民主統一党(DUP)だ。DUPはメイ首相と閣外協力しており、下院で過半数議席を持っていない保守党にとって、法案成立に不可欠な10議席を握っている。DUP所属の議員はEU残留派で、メイ首相の協定も支持しないと明らかにした。

<過去の関連記事>

メイ首相が3度目の採決を認められるかどうかは、バーコウ下院議長にかかっている。バーコウ議長は27日、一度否決された動議は同じ会期内に再度採決にかけることはできないという慣習を再度引用し、議員が以前に否決した協定と「実質的に同じ」ものを、3度目の「意味ある投票」にかけることはできないと繰り返している。

さらに示唆的投票を推進していた議員からは、否決された8案の中で最も賛成票の多かった「確認のための」2度目の国民投票について、4月1日に下院で再審議すべきだとの声も挙がっている。この八方ふさがりの状況を打破するには、総選挙を実施し、下院議員を選び直すしかないという意見も出ている。

何らかの打開策が見つからない限り、イギリスは4月12日に合意のないままEUを離脱することになる。議員の多くがこれに反対しているため可能性は低いとみられているが、どうやって合意なしブレグジットを回避するか、そのプロセスの責任は誰が負うのか、全く決まっていない。


離脱すればそれで一件落着?

答えは「ノー」だ。

現在の下院審議は、あくまでイギリスがEUから離脱する条件に的を絞ったものだ。

無事に離脱できたとして、その後のEUとの関係については、引き続き交渉が必要となる。

(英語記事 Brexit: What just happened?