2019年03月29日 12:25 公開

英下院(定数650)は29日、テリーザ・メイ首相が欧州連合(EU)とまとめたブレグジット(イギリスのEU離脱)協定の一部について3度目の採決を行う。イギリスは当初、この日にEUを離脱する予定だったが離脱条件がまとまらず、すでに延期を決めている。

下院議員は今回、協定の中でも特に争点になったアイルランド国境をめぐる「バックストップ」条項と、離脱時にEUに支払う清算金、市民権の3点について投票する。

一方、イギリスとEUの将来の関係についての取り決めは採決されないため、協定全体の是非を問う「意味ある採決」には当たらないという。

政府の方針に議員からは怒りの声が挙がったが、保守党のアンドレア・レッドソム院内総務は、イギリスが5月22日までにEUから離脱するには今回の採決が「決定打」になると述べた。

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欧州理事会は先に、ブレグジットを3月29日に以降に延期したいというイギリスの要請を承認した。下院が離脱協定を29日夜までに承認すれば、新たな離脱日は5月22日となる見込み。

一方、協定が承認されなかった場合の離脱日は4月12日で、イギリスはこの日までに協定を承認するか、「次の方針」を示す必要がある。さらなる延期となった場合、イギリスは5月末に行われる欧州議会選挙に参加しなくてはならない。

メイ首相の協定は、清算金や離脱後の移行期間、バックストップなどを含む「離脱合意」と、ブレグジット後の英・EU関係の道筋を示した「政治宣言」に大別される。

BBCのアダム・フレミング・ブリュッセル特派員によると、EU側の公式な見解では、29日までに承認が必要なのはこのうち離脱合意だけだという。

そのため、メイ首相はEU離脱を確実なものにするために離脱合意だけを29日に採決にかけ、政治宣言については来週以降に投票する方針だと、BBCのローラ・クンスバーグ政治編集長は解説している。

メイ首相は27日、離脱協定を可決されれば今後のEUとの交渉には参加せず、首相を辞任する用意があると保守党の下院議員に伝えている。ただ、新首相が選ばれるまでは現職にとどまる意向だ。

首相の発表を受け、ボリス・ジョンソン前外相を含む離脱派議員が協定支持に回ると表明したものの、なお多くの離脱派議員が協定に反対している。

12日の2度目の採決では、協定は149票差で否決された。メイ首相は、この時に造反した75人の保守党議員を呼び戻す必要がある。

レッドソム院内総務は、29日午後11時(日本時間30日午前8時)までに下院が離脱合意に同意しなければ、欧州理事会は5月22日の離脱を認めないだろうと説明した。

「欧州理事会の決定を有効にするために尽力することが大事だ。下院は29日の動議によって、5月22日までの離脱延期を確保するチャンスが与えられる」

「新たに延期を要請したり、欧州議会選挙に参加する必要が出ることは誰も望んでいないはずだ」

レッドソム院内総務の説明に対し、一部議員からは怒りの声が挙がった。最大野党・労働党のメアリー・クレイ議員はこの方針について「これまでの努力を覆す異常で前例のないもので(中略)我々は協定の両方の要素を同時に採決すべきだ」と述べた。

また、労働党と北アイルランドの民主統一党(DUP)は共に、29日の採決では離脱合意に反対するとしている。

労働党のジェレミー・コービン党首は、離脱合意と政治宣言は分けられるものではない、「そうでなければ目隠しされた状態でEUを離脱することになる」と話した。

DUPのナイジェル・ドッズ副党首もBBCに対し、党の方針を変えるような「解決策が突然現れる」とは思っていないと語った。

ドッズ氏は、DUPは「北アイルランドとその他のイギリスの間に通商上の境界線を引くような」計画を懸念しており、それは「北アイルランド議会でもイギリス議会でもない誰かが法律を作るということだ」と指摘した。

政府方針に疑問の声も

EU離脱法では、離脱合意と政治宣言の両方が「意味ある採決」にかけられないと離脱協定を批准できないと定めている。そのため、29日の協定批准は難しい見通し。

政府には、来週以降に政治宣言を議会で採決にかけるか、EU離脱法を改正し、批准の必要性を失くす選択肢がある。

一部の議員からは政府の方針に疑問の声が挙がっている。労働党のヴァレリー・ヴァズ議員は、「違法に思える」と述べ、「政権運営のやり方としておかしい」と批判した。

労働党のブレグジット特別委員会を率いるヒラリー・ベン議員からは、5月22日の離脱が決まった場合、その段階で延期追加を「求めることはもうできないのか」という質問が出た。5月に入ってからでは、欧州議会選挙に参加するには遅すぎるためだ。

ジェフリー・コックス法務長官は、この点について29日に回答するとしている。

一方でジョン・バーコウ下院議長は、政府の「新たな」動きは、同一内容の協定に対する3度目の採決は認めないという自分の決定に、沿ったものだと述べた。

なお、下院は4月1日、EU離脱中止を求めるオンライン請願について審議する。この請願にはこれまでに600万筆近い署名が集まっている。

2度目の国民投票を求める請願(16万筆)と、「国民投票の結果を尊重し」合意のないまま3月29日に離脱するよう求める請願(16万5000筆)についても審議する予定だ。

(英語記事 MPs asked to vote on withdrawal agreement