2019年04月02日 12:09 公開

英下院(定数650)は1日夜、欧州連合(EU)離脱について2度目の「示唆的投票」を行ったが、今回も議員が提出した4案全てが否決された

「示唆的投票」は、ブレグジット(イギリスのEU離脱)のこう着状態を脱却するため、テリーザ・メイ首相がEUと取りまとめた離脱協定に代わる案を議会として見つけるために行われている。

メイ首相の協定はこれまでに3度、否決されている。下院は4月12日までに過半数の支持を得られる案を見つけようと、なお模索中だ。

否決された4案

今回の「示唆的投票」のために提出された案は以下の4つ。議員は1日の議会でこれらを審議し、夕方から投票を行った。

  • 関税同盟:あらゆるブレグジット協定に「イギリス全体とEUの恒久的・包括的な関税同盟」を加える交渉を行う案 ――賛成273 反対276
  • 共同市場2.0:欧州自由貿易協定(EFTA)に再加入し、欧州経済領域(EEA)にとどまる案 ――賛成261 反対282
  • 確認のための(2度目の)国民投票:議会を通過した離脱協定に対し、批准の前に国民に是非を問う案 ――賛成280 反対292
  • 合意なし離脱の回避:合意なし離脱となるあらゆる可能性を排除する案。選択肢にはブレグジット中止も含まれる ――賛成191 反対292

最も承認に近かった議員案はEUとの関税同盟を含めるもので、3票差の僅差で敗れた。これは「ソフトブレグジット」と呼ばれるもので、EU離脱後も通商上のつながりを残そうという内容だ。

支持者は、この案ならブレグジットによるイギリス経済への打撃を抑えられるとしている。特に、EUの単一市場に残留すればその効果は大きいという。

一方、この案ではイギリスはEU法や規則に縛られる半面、その内容是非を問うこともできず離脱したことにならないという批判もある。また、非EU加盟国と個別の通商協定を結ぶ権利もなくなる可能性があるとの指摘もある。

共同市場2.0案を出した与党・保守党のニック・ボールズ議員は、否決の発表を受けて保守党から離脱した。

示唆的投票の結果は政府を法的に拘束するものではないため、いずれかの案が可決されたとしてもメイ首相や政府が実施する確証はなかった。

しかしメイ首相も、自分がEUと交渉・合意した離脱協定がイギリス議会で3回否決された今、新しい道筋を立てるよう圧力を掛けられている。

首相は現在、下院が自分の離脱協定を可決すれば辞任する意向を示している。

内閣は2日、5時間にわたる閣議を予定している。

これまでの動向

英下院は25日夜、こう着状態を打破するために、3月27日と4月1日に行われるEU離脱をめぐる審議の主導権を政府から下院に移すという異例の修正案を329対302の僅差で可決した。

27日には8案が示唆的投票にかけられたが、全てが否決されている。1日には8案が提出され、ジョン・バーコウ下院議長がうち4案を採決すると決定した。

一方のメイ首相は29日、協定の中でもEUがこの日までの承認を求めていた一部内容について採決を行ったが、こちらも否決されている

これからどうなる?

メイ首相は、協定を4度目の採決にかけようとしていると伝えられている。最初は反対したものの2度目で支持に回った議員も多く、1度目よりも賛成票が多かったが、それでも58票差で敗れた。

最大野党・労働党のジェレミー・コービン党首は、過半数の支持を得る案を見つけ出すため示唆的投票を続けるべきだと主張している。しかしそうした動きも、その後にメイ首相の協定とその案による「決選投票」が行われるかも不透明だ。

どの案も下院を通過しなければ、イギリスは12日にEUとの合意のないまま離脱となる。多くの議員や企業が、合意なしの「ハードブレグジット」は少なくとも短期的には混乱を招くと懸念を表明している。

ほとんどの議員が合意なし離脱に反対していることから、実際にそうなる可能性は低いと考えられている。しかし、どのようにこれを回避し、誰がその作業を担当するのかは不確かなままだ。

EU側はいまや、12日の「合意なし」ブレグジットが最もありえる結果だと考えている。

一方、下院議員がメイ首相の協定を承認した場合、離脱日は5月22日となる。

それ以外の選択肢で離脱が5月22日より後になる場合――例えば、この局面を打破するために総選挙で新たに議員を選び直すなど――、イギリスは離脱時期をさらに延期するため、EUの承認を得なくてはならない。

EUはさらに延期する条件として、5月23日に行われる欧州議会選挙への参加を求めている。メイ首相は、この案に反対している。

EU意思決定機関の欧州理事会は、必要ならば4月10日に臨時会合を開き、離脱延期の条件が整っているかを協議するという。

最後の選択肢は、EU基本条約(リスボン条約)第50条の発動を撤回し、EU離脱そのものを取りやめるというものだが、この可能性は非常に低いとみられている。

いつ終わるのか

それもまだ不透明だ。

メイ首相が向こう数週間、首相でいられるかも分からない。首相は協定が承認されれば辞任すると約束しているが、協定が否決された場合、首相職に留まれるだけの権威を持っているかという疑問が出ている。

現在の下院審議は、あくまでイギリスがEUから離脱する条件に的を絞ったものだ。

無事に離脱できたとして、その後のEUとの関係については、引き続き交渉が必要となる。

イギリスやEU諸国の国民や企業が抱える不透明感は、まだまだ続く。

(英語記事 Brexit: What just happened?