反対の理由は、主に2点ある。一つは、外国人労働者を移入する前に日本人の労働者の働く環境を向上させることが急務であるからだ。

 長く続く経済停滞の影響で、多くの日本国民が「賃金など報酬が不足している」と感じている。実際に、働き盛り世代である30代後半から40代の貯蓄不足は深刻である。

 これは統計的な問題はあるにせよ、この世代の人たちの生涯年収が「失われた20年」の影響で抑制されてきたことの表れだと考えていいだだろう。何よりも、この世代の稼得所得をできるだけ向上させることが必要だ。

 しかし、外国人労働者の増加は、受け入れ国である日本人労働者の賃金を低下させることにつながるだろう。他方で、外国人労働者の賃金は母国で働いていたときよりも向上する。

 労働市場が完全に機能していると、外国人労働者のメリットが、日本人労働者のデメリットを上回る。だから国際的な経済厚生の観点からは望ましい、というのが、教科書的な説明である。

 だが、上述の通り、外国人労働者を大幅に導入する前に、「日本人ファースト」で待遇改善を実現させる必要がある。では、日本人労働者も、外国人労働者と同じように待遇を改善できる可能性はあるのか。

 実は、ここに二つ目の反対理由がある。実態としては既に書いたように、150万人ほどの外国人が現在日本で働いている。その人たちが賃金の引き下げ効果をもたらしているかどうかは実証すべき問題だろう。

 10年ほど前の実証では、外国人労働者による賃金引き下げ効果はなかった。人手不足の加速を考えれば、最近でも、外国人労働者増加の影響で、賃金引き下げ効果があったとしても限定されているだろう。これは、毎年の最低賃金引き上げが、失業率増加をもたらしていないことと同じ理屈だ。
出入国在留管理庁の看板除幕式を行った(左から)山下貴司法務相と佐々木聖子出入国在留管理庁長官=2019年4月1日(鴨川一也撮影)
出入国在留管理庁の看板除幕式を行った(左から)山下貴司法務相と佐々木聖子出入国在留管理庁長官=2019年4月1日(鴨川一也撮影)
 つまり、この人手不足は通説と違い、人口減少よりも取りあえずの景気拡大によってもたらされたものだ。完全失業率が低下し、就業者数が増加し、そして有効求人倍率も増加している。これらは14年の消費増税やその後の世界経済の不調で、一時期足踏みしたが、16年以降は再び改善している。

 要するに、外国人労働者を受け入れても、日本人労働者との競合が避けられてきたのは、この景気拡大に依存しているということだ。だが、景気拡大に黄色信号が点滅している現在、さらなる消費増税を実施すれば、赤信号に転ずるのは言うまでもないだろう。