上崎哉(近畿大法学部教授)

 2019年3月7日に行われた大阪都構想の制度案(協定書)を作る法定協議会が決裂したことで、大阪府の松井一郎知事(大阪維新の会代表)と大阪市の吉村洋文市長(維新政調会長)が辞職届を提出した。2人とも議会で不同意となったが自動失職し、統一地方選として予定されていた4月7日投開票の大阪府議選と大阪市議選に併せて、知事選と市長選の「ダブル選」が行われることとなった。

 「都」構想を推進するには、法定協議会で協定書をまとめた上で、大阪府議会と大阪市議会の承認を得る必要がある。二元代表制を採用するわが国において、議会の支持を得るために、首長が必要な手段を講じることは否定されるものではない。

 前回、府議選と市議選が行われたのは2015年4月のことだ。橋下徹氏が大阪市長を務めており、翌月に大阪市を廃止して特別区を設置することの是非を問う住民投票を控えていた時期であった。当時橋下氏が代表を務めていた大阪維新の会にとって、有利な条件が整っていたといえる。

 4年前に比べて、今回の選挙はこうした条件に恵まれてはいない。ダブル選が選択されたのは、府議選と市議選にぶつけることで、少しでも状況を有利にしたいという狙いがあったのであろう。

 また、「一丁目一番地」とされる「都」構想を公約として掲げるには、任期満了を待つよりも、このタイミングが望ましいという計算も働いたものと考えられる。任期満了選挙となれば、4年間で都構想を実現できなかった責任や理由を問われかねないが、今回の流れであれば、公明党に責任を転嫁することもできる。

 このように、ダブル選をぶつけたそもそもの狙いは、府議選と市議選を有利に進めることにある。だが、両議会選で勝利を収め、一気に「都」構想の住民投票に持ち込むだけの自信はなかったのであろう。

 府議会・市議会ともに過半数を獲得できるだけの手応えがあれば、純粋な出直し選を仕掛ければ済むことである。ところが、両議会で過半数を占めるまでの自信はない。
2015年5月、住民投票後初の定例会見に臨む大阪市の橋下徹市長(門井聡撮影)
2015年5月、住民投票後初の定例会見に臨む大阪市の橋下徹市長(門井聡撮影)
 かといって、「都」構想の芽はできるだけ残しておきたい。そこで、知事と市長が新たに4年の任期を得ることを狙いとして、松井前知事が市長選、吉村前市長が知事選にそれぞれ出馬する「クロス選」という戦術を採ったのである。

 かつて、橋下市長の時代にも、公明党との関係が悪化し、「都」構想の住民投票の実現が危ぶまれたことがあった。ところが、2014年3月の出直し選で橋下氏が再選され、同年12月の総選挙で維新の党が強固な支持を見せつけたところ、公明党は住民投票の実施について譲歩を余儀なくされた。