佐々木信夫(中央大名誉教授)

 今回の「大阪クロス選」に対して、知事、市長の候補者入れ替えがどうだとか、一度否決された「大阪都構想」を持ち出すのはルール違反だとか、やや些末(さまつ)で矮小化された議論に陥りがちである。だが、この選挙戦に、私は非常に大きな意味があると考え、二つの点で注目してきた。

 一つは、この国のあり方の基本が問われるかどうか。東京一極集中を食い止める切り札として新たな大阪づくり、副首都形成、二眼レフ国土構造への転換のきっかけとなるかだ。もう一つは、自民長期政権による「改革なき政治」の風土を一掃する機会になるかどうか。安倍政治と一線を画し、大阪独自の都構想を進める「維新政治」が大きく広がるかどうかだ。

 当然、その選択はすべて有権者の投票行動に託されている。世の中では「東京一極集中」はけしからん、日本を歪めている「諸悪の根源」人口減の加速は、出生率ワーストワンの東京がブラックホールのように若い人を飲み込むからだ、と口をそろえて言う。

 そこで、しからばどうするか聞くとみな黙ってしまう。国会での質疑もここはスルーだ。東京一極集中論議などどこ吹く風、相変わらずの「サービスは大きく、負担は小さく」との手品師のようなポピュリズム合戦を繰り広げている。

 所得格差、機会格差を縮めるには教育の無償化も有効だが、これが人口減対策だと言われてもそうは思えない。選挙前のバラマキではないか。大都市からのUターン希望者にカネを出すというが、これで東京集中が緩むとでも考えているのか。
2019年3月、大阪市役所前に設置された統一地方選挙の日程を知らせる看板(南雲都撮影)
2019年3月、大阪市役所前に設置された統一地方選挙の日程を知らせる看板(南雲都撮影)
 地方の雇用の場、若者を吸引できる拠点性のある都市を育てなければならないのに、それを阻むさまざまな規制や集権構造の解体には手を付けない。大借金からどう脱出し、過疎・過密の同時併存する日本の構造的双子問題をどう解決するかという骨太の話もない。

 確かに慣れ親しんだ日常を変えるのは容易でない。明治維新から150年、この間、日本はひたすら人は増え、所得は増え、税収は増え、拡大続きの「右肩上がり社会」だった。

 しかし、この先は一転、人は減り、所得は減り、税収は減り、縮小続きの「右肩下がり社会」に向かう。下り坂も、年を追う毎に厳しいものとなっていく。80年後、大方の予想では良くて人口8千万人、悪くすると5千万人まで減るという。これをどう捉えるかだ。