木村收(大阪市立大学都市研究プラザ名誉研究員)

 統一地方選挙にあわせて急遽(きゅうきょ)大阪府知事と大阪市長のダブル選挙が行われることとなった。

 この選挙の特徴は、ともに連携して大阪都構想を推進してきた2人の首長が、任期を残し意表をつくかたちで突如辞意を表明(議会不同意後自動失職)したことに加えて、知事と市長がお互いに目指すポジションを取り替えて出馬したことにある。こうして異例のダブルクロス選挙となった。

 一般論として、政治家である知事と市長がその政治的信条から別の職をルールに沿って目指すことに違和感はない。

 しかし、今回のダブルクロス選挙は、11月に予定されている選挙を前倒しすることで経費の節減になるからだと公言されていることは理解できない。民主主義のルールは選挙経費より尊重されなければならない。

 実態は、都構想の行き詰まり打開のために府・市の議員選挙との相乗効果を狙うとともに、相手陣営の機先を制しようとする党利党略に基づく奇策であるとしか考えられない。
 
 ここで都構想をめぐる動きと今回のダブルクロス選挙に至る経緯を簡単に要約しておきたい。

 都構想は2015年5月の住民投票で否決された。しかし、同年11月のダブル選挙で再度都構想を公約に掲げる大阪維新の会の松井一郎氏と吉村洋文氏がともに知事と市長に当選し、再び挑戦が始まった。

 2017年6月には大都市制度(特別区設置)協議会(略して「法定協議会」)が設置され、今年3月まで23回の協議が重ねられた。特別区設置協定書の作成を目的とする協議会であるが、その構成員20人は府・市の首長と議員のみで構成されており、最終局面が近づくにつれて政治的対立が表面化することは避けられないと予見されていた。
「大阪都構想」を議論する法定協議会が開かれた=2019年1月29日、大阪市中央区の大阪府庁(彦野公太朗撮影)
「大阪都構想」を議論する法定協議会が開かれた=2019年1月29日、大阪市中央区の大阪府庁(彦野公太朗撮影)
 昨年までは事務局(府・市共同設置の副首都推進局)が項目ごとにたたき台となる考え方を提示し、委員との質疑応答を重ねてきた。その取りまとめとして「副首都大阪にふさわしい大都市制度《特別区(素案)》」がある。協議をする上での「たたき台」であり、大阪都構想の概要はこれによって知ることができる。分厚い資料は難解だが、その核心は大阪市を廃止し、その事務事業を府移管分と新たに基礎自治体となる60万~70万の人口規模の四つの特別区とに仕分けすることにある。

 そしてその裏付けとなる財源は、府は市の有力財源である法人市民税、固定資産税、都市計画税、事業所税などで賄い、特別区は個人市民税などの限られた市町村税のほか、府から交付される財政調整財源に大きく依存する(地方交付税の直接交付はない)。実質的に府の管理下に入り、財政自治のない特別区は真に基礎的自治体といえるのか疑問である。