吉田則昭(目白大学メディア学部准教授)

 一昨年から今年にかけて、週刊誌、とりわけあの『週刊文春』の健康雑誌化が顕著になったという。「文春砲」として2016年の出版界10大ニュースにもなり、大幅な部数増を獲得してきた『週刊文春』だが、編集長交代などもあってか、かつてのスクープの勢いが衰えた感もある。

 かつて筆者もメディア団体の職員であったとき、世の中の動向を知るため、『週刊朝日』『サンデー毎日』『週刊ポスト』『週刊現代』『週刊新潮』『週刊文春』などを欠かさず読んでいたが、総合週刊誌の状況がこれほど変わりつつあったとは気づかなかった。

 まず、これら雑誌のデータを見直してみたところ、驚いたのは、全読者の4分の1(約25%)が、65歳以上69歳の年齢層に収まっていることであった(出典:日本ABC協会『雑誌発行社レポート』2018年1~6月)。これらのデータはビデオリサーチなど第三者機関が調べたもので客観性は高い。しかし、調査項目の設定上、70歳以上の読者の回答が除外されていることもありうるため、実際の読者の年齢層はさらに上がるものとみられる。

 他方、雑誌社側は、「50歳前後のビジネスマン」「60歳以上のプラチナ世代」をターゲット読者と想定しているから、実際の読者と乖離してきていることはもはや明白である。つまり、少子高齢化が進む現在、これら週刊誌読者も70代前後の団塊世代が、実は本当の読者であり、一方で若い世代の読者がそれほど増えていない現状が見て取れる。

 販売部数データを見てみると、『週刊現代』は2018年上半期に20万9025部となり、前年同期比で5万5千部ほど部数を落とし、『週刊ポスト』の21万1336部に後塵(こうじん)を拝するようになった。読者の高齢化が部数減の一因となっているのだが、いずれの週刊誌も誌面をさらに高齢者向けにシフトさせることに傾注し、若い読者を新たに獲得するという「攻め」の余裕も少ないという状況のようである。

東京都新宿区にある新潮社本館ビル=2012年3月撮影
東京都新宿区にある
新潮社本館ビル=2012年3月撮影
 ここ数年、『週刊朝日』が2009年に「終活」という造語を世に広めて以来、他誌でも「完璧な終活」(サンデー毎日)、「食べてはいけない」(週刊新潮)の特集のほか、「不眠を防ぐ住まい」「高血圧新目標値130に専門医が異議あり!」(週刊文春)など、高齢者向けの健康を取り上げる記事が目立つようになってきた。老人介護、認知症などを扱った『週刊朝日』の連載漫画「ヘルプマン」も好調のようである。

 さらに2018年末から最近まで、『週刊現代』が「死後の手続き」路線を本格化させた「最期の総力戦」特集を13回続け、『週刊朝日』も2019年1月から「書き込み式 死後の手続き」を7回連続して掲載している。

 こうして高齢化に伴うあらゆる変化をみてみると、週刊誌が健康雑誌へとシフトしてくるのも時間の問題だったのであろう。

 そして、つい最近、象徴的だったのは、ツイッター上で『週刊ポスト』『週刊現代』の二大誌の新聞広告をみたネットユーザーが、「とうとう政治や社会問題を扱わなくなった。消滅した」との指摘もあり、話題にもなっていた。