荻野達史(静岡大学教授)

 内閣府が3月末に公表した調査によると、40~64歳までの「ひきこもり人口」は61万人を超えるという。このことは多々報道され、既にさまざまな反応が示されているが、われわれはこの調査結果のどこにひとまず注目すべきなのだろうか。ひきこもり支援現場での調査を15年以上続けてきた一研究者として思うところを述べてみたい。

 半年以上、身体的な病気というわけではないが、社会的交流からかなり遠ざかっている場合、この調査では「広義のひきこもり」とカウントされた。具体的には、趣味のときだけ出かける、近所のコンビニなどには出かける、さらには自宅・自室からほとんど出ないといった場合である。それに該当する人が47人で、これを全国推計数に計算すると61万人になるというわけだ。

 この調査結果が報道されると、男性がほぼ75%ということもあり、ネット上では「子供部屋おじさん」という表現も散見された。こうした言葉が即座に用いられるところにも、私には61万人が意味する問題が現れているように思われる。それについては最後に論じよう。

 また、47人について5歳刻みの年齢区分で見てみると、40~44歳(12人、26%)、45~49歳(6人、13%)、50~54歳(7人、15%)、55~59歳(10人、21%)、60~64歳(12人、26%)となっている(内閣府ホームページに掲載された報告書を参照)。

 これは定年退職後の問題もあるのではないかと思われる。つまり、もっぱら趣味を楽しんでいるという人(あるいは退職してからすっかり孤立した人?)もある程度いるのではという見方もありえたが、その年齢層が多数派というわけではない。

 この調査結果を受けて、根本匠厚生労働相が「大人のひきこもりは新しい社会問題だ」と述べたと報じられている。しかし、支援体制や方法が不十分であるがゆえに「取り残されてきた問題」という側面もあるのではないだろうか。詳細な分析が待たれるところだが、報告書の集計値からもその点は伺われる。私が注目するべきと考えるのはこの点だ。
参院本会議で答弁する根本匠厚生労働相=2019年1月(春名中撮影)
参院本会議で答弁する根本匠厚生労働相=2019年1月(春名中撮影)
 例えば、「初めて現在の状態になったのは何歳頃か」という質問に対して、40~44歳の層では、30代までにと答えている人の合計は実に83%(20代までは67%)、45~49歳では50%(20代までは33%)である。

 30代ということは、10~15年前の期間である。つまり、ひきこもりに関わる支援政策が開始されて以降の時期と重なるのだ。このことの意味は重い。政策的取り組みが開始されたのは2000年からであり、旧ガイドラインは03年に発表され、地域精神保健の中にひきこもり支援を位置づけることが明記された。