田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授)

 20カ国・地域(G20)の財務相・中央銀行総裁会議が、日本を議長国として米ワシントンで行われた。日本のメディアは、麻生太郎財務相が世界経済の減速を防ぐための「国際協調」を訴えたと報じた。

 そして、それと同じ規模で大きく取り上げたのが、10月に予定している消費税率10%への引き上げを明言したことである。ほとんどのメディアは、麻生氏の「需要の変動を乗り越えるために十分の財政措置を講じる」との従来の政府見解を併せて伝えただけである。

 世界経済の景気減速に対応するために増税を行うことが「国際協調」とは、明らかに矛盾しているが、それを指摘する日本のメディアはない。G20直前だったが、海外メディアであるウォール・ストリート・ジャーナルが消費増税を日本経済への「自傷行為」「アベノミクスの第二の矢を折る」と批判したのが目立っただけである。

 日本のメディアは、麻生氏の発言をあかたも「国際公約」のように扱いかねない勢いである。このように、先進7カ国(G7)会合やG20などでは、官僚の「台本」に従って、増税路線を主に日本の記者向けに発言することで、「国際公約」化する動きがよくある。官僚の言うことをそのまま紙面に展開するしかない、日本の低レベルな経済報道は、その「国際公約」に何の考察も加えず掲載するだけである。

 当たり前だが、もし世界経済の悪化を各国の「国際協調」で乗り切るならば、その対応は財政政策を拡大することであっても、増税で財政を緊縮することではない。

 財務省とその「代理人」といえる政治家たちの狙いは、消費税10%の次は15%、いやそれ以上に引き上げることにある。財務省から「海外派遣」された官僚たちが国際通貨基金(IMF)などを通じて「日本はさらなる財政再建のために一段の増税が必要」と発信させる。そして国民が同意もしてないのに、いつの間にか増税が「国際公約」化するという手法が繰り返されてきた。
2019年4月12日、ワシントンで開かれたG20財務相・中央銀行総裁会議の出席者(ゲッティ=共同)
2019年4月12日、ワシントンで開かれたG20財務相・中央銀行総裁会議の出席者(ゲッティ=共同)
 さらに、この勝手に生み出した「国際公約」を無視して増税しなければ、国債の信頼が揺らぐと、通信社や新聞を使って喧伝(けんでん)することも常套(じょうとう)手段なのである。経済的発想において何の能力もない政治家の大半もこの話を真顔で支持者や街頭演説で告知していく。