2019年04月16日 11:52 公開

クリス・フォックステクノロジー担当記者

イギリス政府はこのほど、テロ組織の宣伝や児童虐待の投稿など、インターネットの「有害情報」への対策が不十分なサイトについて、罰金や閲覧禁止などを科す方針だ。

デジタル・文化・メディア・スポーツ省(DCMS)が、IT企業が従うべき「業務規範」を独立した監視団体に作らせる方針を明らかにした。

この規範に違反した場合、企業幹部の個人の責任が問われる可能性もある。また、IT業界に監視団体への拠出金を求めることを検討している。

一方、こうした計画には言論の自由を脅かすという批判の声が上がっている。

DCMSと内務省は共同で「オンライン有害情報白書」をまとめた。国民の意見を聞くパブリックコメントを12週間にわたって実施している。

同白書による提案は以下の通り。


  • ソーシャルメディア(SNS)やネット企業向けの「業務規範」を作る、独立した規制団体を設立する
  • 規制団体には、業務規範を守らない企業に罰金を科すなどの権限を与える
  • 企業の幹部に罰金を科したり、業務規範に違反したサイトを見られなくするようプロバイダーに命じたりするなどの、さらなる権限を規制団体に与えることも検討する

ジェレミー・ライト・デジタル相はこれらの計画を説明した際、「オンライン企業が自主規制する時代は終わった」と述べた。

さらに、「ネットの有害情報に関する業界の自発的な対策は一貫性がなく、十分でもなかった」と話した。

ライト氏はまた、BBCの番組「ブレックファスト」で今後見込まれる罰金について発言し、「一般データ保護規則(GDPR)に絡んで情報コミッショナーが科せる罰金は、企業の売り上げの最大4%だ……私たちもそれと同じくらいの数字を考えるべきだ」との考えを示した。

「オンライン有害情報」とは?

政府の計画は、法に明記されている多様な問題を視野に入れている。テロに関する情報、子どもへの性的虐待、リベンジポルノ(復讐目的で相手の裸の画像などを投稿する行為)、ヘイトクライム(憎悪犯罪)、ハラスメント、非合法の物品の販売などだ。

さらに、サイバーいじめやトローリング(荒らし行為)、フェイクニュースや偽情報の拡散など、有害ではあるものの法的には微妙な行為も含んでいる。

政府の計画はまた、自傷行為や自殺を促す情報への対策を取るよう、SNS企業に強く求めている。これは、2017年に当時14歳のモリー・ラッセルさんが自ら命を絶ったことをきっかけに注目が高まった問題だ。


モリーさんの死後、うつや自殺に関する悲痛な情報が彼女のインスタグラムのアカウントにあるのを、家族が発見した。モリーさんの父親のイアン・ラッセルさんは、巨大SNS企業は彼女の死に一部責任があると考えている。

イアンさんはBBCの取材に、今回の白書はインターネットを安全な空間にするうえで「非常に重要な一歩だ」と述べた。

さらに、「私たちが経験したことや、悲しいことに数多くの家庭が経験していることを考えれば、緊急性は非常に高い」と話した。

一方でイアンさんは、白書には親のためになる具体的な指針をもっと盛り込めたのではないかと述べた。

「例えば、アプリやコンテンツの年齢制限や評価にはあまり意味がない。多くの企業が、自社製品を自分たちで評価しているからだ。そのため、親としてプラットフォームをどれくらい信用していいのか、判断するのがとても難しくなっている」

サジド・ジャビド内務相は、IT大手とSNS企業には「企業にとっての利益の源である若者たちを守る倫理的責任がある」と話す。

「私たちが繰り返し行動を求めているのに、子ども虐待やテロリズムなど有害で違法なコンテンツが、あまりに簡単にネットで見られてしまう」


規制団体の役割

この計画では、独立した規制団体がインターネット企業の責任を問うことになる。

活動資金はテクノロジー業界に拠出を求める。政府は、新たな組織をつくるのか、それとも既存の組織に新たな権限をもたせるのか、まだ決めていない。

規制団体は「すぐれた業務の規範」を示し、SNSやネット関連の企業に必ず従うよう求める。

フェイスブックやツイッター、グーグルと同様に、スナップチャットのようなメッセージサービスや、クラウドストレージを提供している企業なども規制の対象になるもようだ。

ルールに従わない会社には、規制団体が罰金を科したり企業名を公表したりできるようにする。

また、企業の幹部たち個人にも罰金を科したり、検索サイト企業に違反サイトへのリンクを抹消させることも検討しているという。

さらに、有害サイトへのアクセスブロックについても意見を聞いている。

SNS企業に報告義務も

今回の白書には、「すぐれた業務の規範」に含まれる可能性のある提案がいくつか記されている。

例えば、フェイクニュースの拡散に対しては、SNS企業に強制的にファクトチェックの担当者を雇わせ、本当のニュースが広まるような手を打つことができるとしている。

ただ、業務規範は規制団体が自ら定めることができる。

白書はまた、SNS企業に各自のサイト内で有害コンテンツがどれくらい見つかったかを示す年度報告書を公表すべきだとしている。

イギリスの児童虐待防止協会(NSPCC)は2017年から新たな規制が必要だと訴えている。また、子どもに対するケアをSNS企業の法的義務にするよう繰り返し求めている。

同協会の広報担当者は「SNS企業はもう時間切れだ。自分たちでは取り締まれず、その代償を子どもたちが払わされている」と話す。

SNS企業の反応は?

フェイスブックイギリス国内の方針をまとめるレベッカ・スティムソン氏は、「プラットフォームを横断する標準的な手法を共有し、非常に多くの重要な決定を民間企業だけですることなくすため、新たな規制は必要だ」と述べた。

「インターネットの新ルールは、社会を害悪から守ると同時に、技術革新やデジタル経済、言論の自由を支えるものであるべきだ」


ツイッターのイギリスでの方針を決定するケイティ・ミンシャル氏は、「私たちは手順の次のステップづくりに関わり、ユーザーの安全性確保とインターネットのオープンかつ自由な性質の保存との間で、適切なバランスを取ることを楽しみにしている」としている。

イギリスのテクノロジー業界の包括団体であるテックUKは、政府が「被害の防止と基本的な権利の間で、どう折り合いをつけてバランスを取るのか明確にしなくてはならない」と表明した。

一方、ネット空間のプライバシーや言論の自由を守る活動をしている「オープン・ライツ・グループ」のジム・キロック代表は、政府の計画は「何百万人ものイギリス人の言論に関する国家規制をつくり出す」ことになると苦言を呈した。

自由市場を支持するシンクタンク、アダム・スミス研究所(本部・ロンドン)で研究チームを率いるマシュー・レシュ氏は、さらに批判的だ。

「政府は西側世界をインターネット検閲へと導いていることを恥じるべきだ。この提案は言論の自由と報道の自由に対する歴史的な攻撃だ」

「イギリスがイランや中国、ロシアといった国々における表現の自由の侵害を非難しているときに、自国の自由を損なうべきではない」

言論の自由のために活動しているアーティクル19(本部・ロンドン)は、政府が「合法的な表現に対する検閲を促すような環境をつくってはならない」と警告。

広報担当者は、インターネットのプラットフォーム企業にいかなる注意義務を負わせることにも反対だと述べた。

さらに、注意義務を課すことは「必然的に彼らにネットワークを積極的に監視させ、コンテンツ消去を限定的に進めることになる」と話した。

その上で、「そうした行動は、個人の表現の自由の権利とプライバシーに関する権利を侵害しかねない」とコメントした。

(英語記事 UK plans social media and internet watchdog