そして共に民主党の政治家が有権者を引きつける材料にしてきたのが「南北宥和」や「平和」だったが、南北関係が上手くいかなくなると、その代わりに持ち出したのが「反日運動」である。

 二つ目は、国益より支持率重視の風潮だ。南北関係の改善に命運をかけてきた文在寅政権だが、政権発足から2年近く経過しても、南北関係の先行きは不透明なままだ。その間、文大統領は、南北首脳会談や各種南北間の交流イベントを通じて、朝鮮半島に春がきたかのような「政治ショー」を展開したが、そのやり方に陰りが出始めた。

 南北間の政治的なイベントを利用して高い支持率を維持してきた文大統領だったが、北朝鮮の度重なる約束違反で、韓国の一般国民も宥和政策に懐疑的になり、支持率低下が止まらなくなった。

 金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は、昨年の時点で年内にソウルを訪問すると約束したが、それは守られていない。非核化においても何ら進展がなく、南北交流は実質を伴わないイベントばかりであることに韓国の一般国民も気づいたからだ。

 そこで持ち出したのが「親日派」との戦争だ。文大統領は「三・一運動」記念日に行った演説で「アカ(共産主義者)という表現は清算しなければならない親日の残滓だ」と話した。

2019年3月1日、ソウル市内で開かれた「三・一独立運動」100年の式典に出席した韓国の文在寅大統領(共同)
2019年3月1日、ソウル市内で
開かれた「三・一独立運動」100年の式典に
出席した韓国の文在寅大統領(共同)
 韓国では左派の中でも、北朝鮮に同調し、金委員長を追随する勢力を「アカ」と呼ぶ場合もあるが、文大統領はこの表現は、親日勢力がつくった言葉のため「親日残滓(残された親日勢力)」と一緒になくすべきだと語ったのだ。

 言い換えれば、左派の中の一部を「アカ」と呼ぶ保守勢力に対する警告でもあった。すなわち、左派政権に批判的な保守勢力は「親日勢力」と決めつけ、その主張に同調すべきでないと言ったのだ。同じ日に文大統領は、「親日残滓を清算する(残された親日勢力をなくすこと)は、後回しできない課題だ」として、唐突にも「親日清算」を当面に優先課題として提示した。

 京畿道議会が日本製品に戦犯ステッカーを貼る条例を作ろうとしたのは、このような文政権の支持率低下を阻止し、反日をもって保守層を牽制し、支持者を結集するための政治的計算によるものだ。