京畿道議会の開会に先立ち、条例案のこうした内容が明らかになると、京畿道のみならず韓国政府関係者からも憂慮の声が上がった。3月20日、日本の教育委員会に当たる京畿道教育庁は「戦犯企業」に関する明確な定義がなく、混乱をもたらす恐れがあるなどとして「受け入れ難い」とする意見書を道議会に送った。また、京畿道教育庁の李在禎 (イ・ジェジョン)教育監も同日、「韓日外交に大きな影響を与えかねないため、まず政府側が立場を決めなければならない」と述べた。また、同月21日には康京和(カン・ギョンファ)外交部長官が「政府として具体的な評価をすることは適切ではない」「自治体議会の審議過程で慎重に検討される必要がある」と述べている。

 そもそも、この条例案を発議した黄大虎議員とは何者なのか。公開されているプロフィールによると、1986年6月、京畿道水原(スウォン)市生まれ、当年32歳。明知(ミョンジ)大学校体育学科卒業後、成均館(ソンギュングァン)大学や崇実(スンシル)大学校の大学院を修了している。昨年6月の地方選挙で現政権と同じ「共に民主党」所属候補として出馬し、初当選。議会では「第2教育委員会」に所属している。1年生議員ゆえに現在まで特に注目すべき実績もない。今回の条例案にしても、特に緊急性や必要性を持つものではなく、強いて言えば、有権者の反日感情に訴える点数稼ぎに見えないこともない。

 実は、こうした指摘や批判は韓国国内でも提起された。黄議員のフェイスブックには「(戦犯企業の)ステッカーをお作りになるついでに、朝鮮戦争の戦犯である中国製品と北朝鮮製品に貼るステッカーをお作りになれば公平ですね」とか「私も外国生活を10年してみたが、このような軽率な行動をすれば、その被害はすべて在外韓国人が受けます。本心から国民のために働く政治家になりたいなら、深く考えて慎重に行動してください」などという、かなり痛烈な批判も書き込まれていた。さらに京畿道議会のホームページの自由掲示板に書き込まれた意見も辛辣(しんらつ)なものばかり。そのうちのいくつかを紹介しよう。

 「やい、京畿道議会の民主党議員の大馬鹿野郎ども。一体、お前らは幼稚園児なのか、何なのか。発想が幼稚すぎて話にならない。今、国を滅ぼそうとしているのか、何なのか。(中略)どうすればこんな発想ができるのか。いま、激変している国際情勢の中では、世界的なマインドを持たねばならない。もちろん、過去に日本が過ちを犯したのは言うまでもないが。昔の植民地時代の考え方にとどまっているお前らが哀れだ。(中略)もし、条例案が通過したらどうなるのか。韓国人であるわれわれも理解できない条例案なのに、外国ではどう見るか。(外国企業は)不安で韓国などと商取引などできないだろう」

 「このような行き過ぎた民族主義は恥ずかしくて情けないです。子供たちの前で恥ずかしくないのですか。大人たちが率先して、このような振る舞いをすれば、それを見て育つはずです。このような条例案を発議する議員も議員ですが、賛成する人も人です。こんなくだらない条例案を作るよりも、国民に役立つことからやってください。(中略)『戦犯ステッカー』? 本当に幼稚で、恥ずかしさで顔が赤くなります。こんな発想は小学生でもやらないはずです。京畿道議員のレベルを表していると思います」

 「過去は過去、歴史は流れて行くものだ。日本の植民地期にあったすべてのことを清算するというのはたやすいことではない。それならば、清平ダム(京畿道加坪郡所在、1944年完成※引用者注)も、京畿道にある数十カ所の貯水池も、京釜線の鉄道もすべて爆破しなればならないだろう。(中略)京畿道民の日本旅行も禁止すべきだ。まったく、道議員という方々の意識水準を疑うほかはない」

 この他にも「教育を政治扇動に利用するな」とか、「(黄議員は)若いからちょっとましだと思っていたが失望した」とか「中国や北朝鮮には何も言えないくせに、国民の反日感情を煽りたてるのはやめろ」とか、条例案の内容を非難する内容がほとんどで、賛成する書き込みは皆無だ。
「本製品は日本の戦犯企業が生産した製品です」と書かれたステッカー(韓国・京畿道議会ホームページから・共同)
「本製品は日本の戦犯企業が生産した製品です」と書かれたステッカー(韓国・京畿道議会ホームページから・共同)
 3月19日には「韓国大学生フォーラム」という保守系の学生団体が、この条例案を批判する論評を発表。論評では条例案の内容を「100年前と現在を区別できない安物民族主義」「グローバルな市民としての教育を受けて育った現代の世代に対するとんでもない民族主義注入」「こうした民族主義は、大和民族論、ナチの優生学、北朝鮮の太陽民族論などと同様のもので、その弊害は深刻」と激しく批判した上で、「教育委員会の場にふさわしくない非哲学的な思考しかできない黄大虎道議員は辞職せよ」とまで述べている。