大場大(東京オンコロジーセンター代表)

 タレントの堀ちえみさんが、深刻な病期の舌がん、そして食道がんであることをブログで公表しました。個人的には、堀さんの舌がん公表直前に報じられた、競泳の池江璃花子選手の白血病公表に大変なショックを受けました。あれほどまばゆいばかりの活躍を続けていた最中、池江選手は白血病であることが判明したのです。

 皆さんは「AYA世代のがん」という言葉をご存じでしょうか。AYAとはAdolescent and Young Adultの略で、年齢的に15~39歳ころまでの、思春期と若年成人世代を指します。AYA世代で、がんと診断される罹患(りかん)数は、国内では年間に約2万1千人にのぼります。

 このAYA世代にとって重要なのは、多くの大切なライフイベントが重なる時期でもあることです。例えば、学業(中学、高校、大学)や就職、恋愛、結婚、妊娠、出産などが挙げられます。

 そのような人生のターニングポイントとなる時期に、がんを発症してしまった患者さんに対して、家族や友人、職場(同僚)、地域社会がどのようにサポートしてあげるのが適切でしょうか。皆さんにもさまざまな考えが浮かぶことでしょう。

 ところが、これらが国家的な問題として取り上げられたり、大人たちによる建設的な議論に発展することもあまり多くないのも事実です。結局、先日辞任したある閣僚による、池江選手へのコメントに関する報道が流れ、物議を醸しただけです。

 実は、池江選手も属する15~19歳の年代で、最も多い疾患が白血病(24%)です。したがって、彼女から発信されるメッセージは、どんなにささいなものだとしても、AYA世代の患者さんに大きなエールになることは間違いありません。
池江璃花子選手を応援しようと、鶴を折る子どもたち=2019年4月、東京都江戸川区
池江璃花子選手を応援しようと、鶴を折る子どもたち=2019年4月、東京都江戸川区
 池江選手に対して、東京五輪を目前に控え、競泳選手としての復活を望む声が大きいのは理解できます。個人的には、つらい治療を乗り越えた先に、AYA世代の一人の女性としての日常を再び取り戻してほしいと切に願います。

 さて、今回「有名人のがん公表の意義」というテーマで執筆依頼をいただいたとき、私はやや重い気持ちになりました。なぜなら、話の切り口によっては非常にデリケートで難しいテーマであり、客観的に論じるのは難しいと感じたからです。ちなみに、本稿で扱う「がん」とは、然(しか)るべき治療によって治癒が得られやすいがんではなく、より深刻な病期の「がん」に罹患したケースを想定しています。